天皇と戦争の世紀(1)岸信介外相の入閣に異を唱えた昭和天皇

公開日: 更新日:

 高市政権による皇位継承のねじ曲げ問題と終戦記念日の重なりから、改めて昭和天皇に注目が集まっている。

  ◇  ◇  ◇

「『政治家』昭和天皇」小宮京編著

 日本の戦後現代史はたくさん書かれているが、多くは「天皇なき戦後史」だ。戦後の外交史で「皇室外交」に言及があっても部分的にとどまる。本書はその空白を埋めるための、政治外交史家による最新の論集だ。初代宮内庁長官の手記が明らかにするのは昭和天皇が共産党に対して抱いた強い警戒感。しかし国民の多くが敗戦後も依然として天皇に強い信頼感を抱いていたことから、共産党を非合法化するより社会事業に力を入れ、共産主義国の実態を国民に啓蒙する方が先決と考えていた。

 新しく発見された石橋湛山の資料によれば、組閣名簿を見た昭和天皇は岸信介外相の名に異を唱えたという。新憲法のもとで国事行為以外に政治に介入しなくなったはずの天皇。意外な事実が「政治家」としての昭和天皇像を浮かび上がらせる。首相になった岸が安保改定を進めようとした際も、反対運動の高まりを見た天皇と周辺はアイゼンハワー米大統領の訪日に懸念を示した。それは圧力となってアイク訪日断念になったのだ。

 青学大教授の編著者を含む8人の専門家が多様な角度から明らかにするのは、想像以上に「政治的」だった昭和天皇の肖像だ。

(筑摩書房 1980円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    Snow Man佐久間大介が城西国際大学メディア学部映像芸術コースで培った“強力な武器”

  2. 2

    八村塁の「レイカーズ電撃復帰」に現実味 2兆円新オーナー誕生でドンチッチとのコンビ復活へ

  3. 3

    榊英雄が2審も懲役8年…昔と違って、一度の過ちも許されない時代に

  4. 4

    東京・日本橋、首都高のフタ取れ 川沿いを楽しく歩ける街に

  5. 5

    高市首相がキーパーソン片山財務相“切り捨て”画策…内閣改造・党役員人事「もう1つの焦点」に

  1. 6

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ

  2. 7

    福岡県議会の「政治とカネ」疑惑が拡大 永田町に“飛び火”で自民党議員が戦々恐々

  3. 8

    北島三郎(2)2018年に次男が急逝「息子だけど、音楽の、とても良い仲間でもあった」

  4. 9

    霞ケ浦“春高バレー指揮官”高橋監督「今から他競技でも県ベスト8は狙えます。部活動の指導は組織づくり」

  5. 10

    松本若菜“シャイニング顔”で奮闘も…「君の好きは無敵」視聴率4.3%からの反撃を阻む“アラ還コンビ”