著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

草彅剛の“変身”が見もの 「嘘の戦争」飽きさせない仕掛け

公開日: 更新日:

 初めて草彅剛の演技に注目したのは、97年のドラマ「いいひと。」だ。その後、03年から06年にかけて放送された、「僕の生きる道」「僕と彼女と彼女の生きる道」「僕の歩く道」で、その評価は一気に高まっていった。

 最近では、15年の「銭の戦争」だ。連帯保証人になったことから、金も仕事も婚約者も失った男の復讐劇。一見おだやかで優しそうな草彅が演じるからこそ、主人公の執念が際立っていた。

 この「嘘の戦争」もまた復讐劇だ。30年前に家族を殺された男が詐欺師となり、事件の関係者を次々と破滅させていく。その過程で見せる草彅の“変身”が見ものだ。気弱な失業者も、精悍なパイロットも、いかにもそれらしい。「他人(ひと)をだますには自分をだますんだ」のセリフが草彅の演技論に聞こえる。

 事件の黒幕であり、最大の敵でもある実業家(市村正親)。その長男(安田顕)を取り込み、跡継ぎである次男(藤木直人)の追及をかわし、彼らの妹(山本美月)を凋落する草彅。連ドラながら、毎回のエピソードにきちんと決着がつくため、見る側を飽きさせない。このメリハリは、「銭の戦争」と同じ後藤法子の脚本のお手柄だ。

 ちなみに、「僕」シリーズの脚本を書いた橋部敦子が現在手掛けているのは、木村拓哉の「A LIFE~愛しき人~」。こちらもまた因縁の勝負である。

(上智大学教授・碓井広義=メディア論)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言