玉川徹氏 暴走発言の真意「おためごかし」じゃつまらない

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■今は政治は視聴者にウケない

  ――最近、ワイドショーが政治をあまり扱わないのが気になります。「統計不正」もほとんどやらなかった。

 視聴者に響かないからですよ。「不正に年金が少なくなっていました」なら生活に直結するので怒りも湧いてくるけれど、「統計がいじられました」では「だから何?」って感じだと思うんです。政治の現場でも盛り上がらなかったし、盛り上がっていなければこっちでもできないですよ。

  ――ワイドショーが扱うからこそ世論が盛り上がるという側面もある。ワイドショーの役割は大きいと思いますが。

 もちろん。でも視聴者に関心を持ってもらえるかと考えると、今はウケない。今の政治状況がつまらないというか、世論も諦めちゃっている感があるでしょう。安倍政権がいいとは思っていないけど、マシだと思っている人がほとんどです。いくら野党が「統計不正だ」と言っても、「何も変わらないだろうな」と皆が思っているのが正直なところ。僕らは自分がどう考えるかも大事だけれど、世間がどう感じているのかを感じ取らなきゃいけない。忖度して政治を扱わないわけじゃありません。忖度していたら、元号であんな話できませんからね。

  ――政治はウケないからやらない。

 それがいいとは思っていないですよ。本当は工夫してでもやった方がいいという思いはある。だから沖縄の県民投票については、普通にやっても視聴者の関心を呼べないと思って、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんというフィルターを通して見てもらう企画を作りました。

  ――最近のニュースで気になったことは?

 人工透析の話にはかなり引っかかりました。人工透析は続けていれば普通と変わらない生活ができる。でも患者には、不自由さとか、機械に生かされている感覚とか、そうまでして生きなければならないのかとか、将来の不安とか、いろんな負の感情があると思うんです。そんな時に医者に「あなたは死ぬこともできますよ」と言われたらどんな影響を与えるのか。患者の身になれば分かるはずですよね。誰だって死ぬ選択肢はある。でもやっぱり医者は「生きろ」と言うべきなんだと僕は思うんです。「透析をやめれば死ぬけれど、それを選ぶ権利もあります」なんて、医者が言っちゃおしまいです。

■「想像力の欠如」と「不寛容」に暗澹たる思い

  ――確かに、あのニュースはいろいろ考えさせられました。

 でも、最も驚いたのは、多くの人が福生病院の対応はあれでいいと言っていることです。それって想像力の問題だと思います。機械に頼らないと生きていけない状況ではないから、想像力が働かないのでしょう。暗澹たる思いを抱きました。(シリアで拘束・解放されたジャーナリストの安田純平氏などに対する)自己責任論もそうです。渡航禁止の国に勝手に行って、紛争に巻き込まれて、税金を使ったという批判がありますが、あれだけ拷問に近いことをされたのに、どうして「帰国できてうれしいだろうな」と思えないのか。それも想像力のなさでしょう。国連の幸福度ランキングで日本が58位に下がって、足を引っ張ったのは92位という「寛容さ」のなさでした。これにも想像力の欠如が関係していると思います。嫌な気持ちになりますね。

(聞き手=小塚かおる/日刊ゲンダイ

▽たまかわ・とおる 1963年宮城県生まれ。89年京大大学院農学研究科修士課程修了後、テレビ朝日入社。「内田忠男モーニングショー」「サンデープロジェクト」「スーパーモーニング」などのディレクターを経て、現在「羽鳥慎一モーニングショー」の月~金曜レギュラーコメンテーター。

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