著者のコラム一覧
山田勝仁演劇ジャーナリスト

「人間合格」太宰治の半生から節操なき“戦後日本人”を描く

公開日: 更新日:

 津島家のために選挙運動で現金を配るなど俗物そのものの中北。しかし、戦争が終わり、民主主義の世の中になると手のひらを返したように、民主主義バンザイをする節操のなさ。

 井上ひさしは「古ダヌキめ! この前まで天皇バンザイで今は民主主義か。それじゃあんまり天皇さまがかわいそうじゃねえか」と修治に叫ばせる。

 鵺(ぬえ)のような中北のしたたかさ、下劣さは、反省するどころか何食わぬ顔で戦後民主主義を謳歌(おうか)する「日本人」の心性そのものではないか。

 井上が喝破するように、天皇制絶対主義から民主主義へといともたやすく鞍替えする日本人は戦後75年の今、戦争の代償である平和憲法をあっさり手放そうとしている。泉下の井上も歯噛みしていることだろう。

 含羞の青柳、直情の塚原、軽妙の伊達。3人がそれぞれの持ち味を生かし、生き生きと役を演じていた。

 芝居を統べる中北は名優すまけいに当てて書かれた役。今回、前進座の俳優・益城を抜擢。新劇初出演、慣れない津軽弁と荷は重かっただろうが、誠実な演技で舞台を引き締めた。

 北川理恵、栗田桃子の2人は16役を早変わり。舞台の躍動感は彼女たちの奮闘のたまもの。

 演出=鵜山仁。23日まで新宿・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA。その後、山形、宮城、兵庫、愛知と地方巡演。

 ★★★★

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  2. 2

    中森明菜が16年ぶりライブ復活! “昭和最高の歌姫”がSNSに飛び交う「別人説」を一蹴する日

  3. 3

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  4. 4

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  5. 5

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  1. 6

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  2. 7

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  3. 8

    田中圭が『悪者』で永野芽郁“二股不倫”騒動はおしまいか? 家族を裏切った重い代償

  4. 9

    永野芽郁「二股不倫報道」の波紋…ベッキー&唐田えりかと同じ道をたどってしまうのか?

  5. 10

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  2. 2

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 5

    広島・大瀬良は仰天「教えていいって言ってない!」…巨人・戸郷との“球種交換”まさかの顛末

  1. 6

    広島新井監督を悩ます小園海斗のジレンマ…打撃がいいから外せない。でも守るところがない

  2. 7

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 8

    令和ロマンくるまは契約解除、ダウンタウンは配信開始…吉本興業の“二枚舌”に批判殺到

  4. 9

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  5. 10

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か