著者のコラム一覧
荒木経惟写真家

1940年、東京生まれ。千葉大工学部卒。電通を経て、72年にフリーの写真家となる。国内外で多数の個展を開催。2008年、オーストリア政府から最高位の「科学・芸術勲章」を叙勲。写真集・著作は550冊以上。近著に傘寿記念の書籍「荒木経惟、写真に生きる。荒木経惟、写真に生きる。 (撮影・野村佐紀子)

<28>ペッチャンコーラは都市の遺骨 写真機の骨壷に収める

公開日: 更新日:

 これが有名な「ペッチャンコーラ」だよ(笑)。ぺっちゃんこになったコーラの缶だから、「ペッチャンコーラ」ね。これはさ、ぺっちゃんこにつぶれたコーラの缶を拾って、うちに持ち帰って、きれいに洗って、白バックにおいて撮ってるんだよ。

 この頃(1972~73年)はね、(渋谷区)淡島通りから渋谷に出てきたあたりに松見坂っていうのがあるんだけど、タクシーに乗っていると、そこで信号待ちになって止まるのよ。そこのところに運送屋があって、トラックが多かったから缶が道路に捨てられた。その缶がみんなぺっちゃんこになるわけね。缶コーヒーとかコーラとか、そこらに捨てるのがいたんだよ、当時はね。今はいないけどさ、そういう時代があったんだよね。車から缶を捨てると、すぐ後ろからきた大型トラックがそれをひいて、ぺちゃんこになるんだ。そのぺちゃんこになった缶を撮るんだよ。でもさ、その場で撮るんじゃないんだ。缶を拾ってね、うちに持って帰るんだ。きれいに洗って、乾燥させる。で、白バックの上に乗せて、それから撮る。そこまでやらないとダメなんだね。

展覧会では「ペッチャンコーラ」は黒い額に入れてるね

「これは立体が平面になったのだから写真である」っていってたね。現代美術してたんだよ(笑)。車にひかれて、ぺっちゃんこになったコカ・コーラの空き缶に、すごく都市を感じたんだね。電通をやめてさ(1972年)、東京の街を撮りながら歩いていると、いっぱい見つけたわけ。でも、そこで撮るんだとつまらない。空き缶を持って帰って、きれいに洗って、乾燥させて、それを白い紙の上に置いて、1点1点撮影するんだよね。そうしないと“東京”が出ない。なんどもなんども東京という車にペチャンコにされていく。きれいにつぶれてるのもあるけど、ボコボコになったのもある。その形が骨みたいに見えてね、「これは都市の遺骨なんだ。その骨を拾って集めて、写真機っていう骨壷に収める」っていうことを言ったりしてたね。その頃にやった展覧会では、「ペッチャンコーラ」は黒い額に入れてるね(個展「廃墟に花」1973年、シミズ画廊)。

 三ノ輪(台東区)の実家の近くの浄閑寺で撮った彼岸花も、墓守が捨てる前に白バックを持って行って、全部撮っただろ。1000個ぐらい集めちゃうわけだよ、拾っちゃうんだよね、ペッチャンコーラも(笑)。

 (構成=内田真由美)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  2. 2

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 3

    福山雅治&稲葉浩志の“新ラブソング”がクリスマス定番曲に殴り込み! 名曲「クリスマス・イブ」などに迫るか

  4. 4

    国分太一の先行きはさらに険しくなった…「答え合わせ」連呼会見後、STARTO社がTOKIOとの年内契約終了発表

  5. 5

    長嶋茂雄引退の丸1年後、「日本一有名な10文字」が湘南で誕生した

  1. 6

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  2. 7

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  3. 8

    文春が報じた中居正広「性暴力」の全貌…守秘義務の情報がなぜこうも都合よく漏れるのか?

  4. 9

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  5. 10

    年末年始はウッチャンナンチャンのかつての人気番組が放送…“復活特番”はどんなタイミングで決まるの?

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  2. 2

    これぞ維新クオリティー!「定数削減法案」絶望的で党は“錯乱状態”…チンピラ度も増し増し

  3. 3

    「おこめ券」迫られる軌道修正…自治体首長から強烈批判、鈴木農相の地元山形も「NO」突き付け

  4. 4

    査定担当から浴びせられた辛辣な低評価の数々…球団はオレを必要としているのかと疑念を抱くようになった

  5. 5

    岡山天音「ひらやすみ」ロス続出!もう1人の人気者《樹木希林さん最後の愛弟子》も大ブレーク

  1. 6

    12月でも被害・出没続々…クマが冬眠できない事情と、する必要がなくなった理由

  2. 7

    やはり進次郎氏は「防衛相」不適格…レーダー照射めぐる中国との反論合戦に「プロ意識欠如」と識者バッサリ

  3. 8

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  4. 9

    黄川田地方創生相が高市政権の“弱点”に急浮上…予算委でグダグダ答弁連発、突如ニヤつく超KYぶり

  5. 10

    2025年のヒロイン今田美桜&河合優実の「あんぱん」人気コンビに暗雲…来年の活躍危惧の見通しも