神宮寺しし丸 コロナでヤバくなったら劇団ひとりが給付金を

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神宮寺しし丸さん(芸人・45歳)

 昨年末「M―1グランプリ」の最年長コンビ・錦鯉や、今年の「アメトーーク!」の「40歳過ぎてバイトやめられない芸人」で注目されてきた40オーバーの芸人。格闘技専門誌の記者をやっているピン芸人・神宮寺しし丸さんは若き社長の座を捨てて芸人貧乏まっしぐら。コロナ禍では師弟関係にある劇団ひとりさんから給付金が支給されて……。

 ◇  ◇  ◇

「アメトーーク!」に出た後はだれも見てなかった僕のユーチューブチャンネルに「がんばってください」という書き込みがすごかったですね。

 上京して芸人を始めてからのバイトはホテルの配膳や、スーパーで試食してもらったり、電器店で新商品を宣伝する店頭キャンペーンをやったり。実はその後に一度、社長になりました。

 23歳の時に芸人を辞めて、バイト仲間と人材派遣の会社を起業。社長に就任し、7年くらい経営していました。社員3人ほどの小さい会社でしたけど、外車に乗れるくらいに、そこそこ稼いでいました。学生を派遣していたので、社長の僕は学生を連れてよく食事に行っていました。酒席では僕の言ったことがメチャ、ウケるんですよ! 

 ある日の酒席で「昔、芸人やってたんだ」と打ち明けたら、「今からでも遅くないですよ!社長、メチャ面白いですから!」と学生たちに勧められ、「俺、イケるのか」と勘違いし、芸人に戻ると決めたんです。後で考えたら、学生は僕が社長だからわざと笑ったりヨイショしただけなのに、まさか僕が社長を辞めると思ってなかったらしく、度肝を抜かれてました。退社後はナンバー2に会社を譲りましたが、僕は自分が起業したその会社にあらためてバイトで入りました(笑い)。芸人の仕事で休みがちになるので、シフトの融通を利かせるためには元の会社がいいだろうと。でも社長がバイトになって、さすがに社内が変な空気になっていましたよ。そこから貧乏の始まり。外車は維持できなくて売り、スーパーのお総菜を半額シールが貼られてから買う生活になりました。

 事務所の先輩の劇団ひとりさんから「お花に詳しいキャラクターはどうだ?」と提案され、僕もさかなクンみたいになりたいと考えて花の知識を蓄えるために花屋さんでバイト。すごく勉強して誕生日を言われれば365日ごとの誕生日の花と花言葉を即座に言えるまでになったのですが、その花屋さんが閉店してバイトを失いました……。

格闘技雑誌記者の仕事が芸人の仕事につながった

 そのあとは格闘技雑誌の記者を始めました。もともと格闘技が大好きで自分で「格闘技情報サイト」を作り、見た試合の記事をアップしていました。

 たくさん書いていたからか、ある格闘技雑誌の編集長から「うちの雑誌で私と対談しよう」と申し出が! 僕が一応芸人だからでしょうね。さらに対談後は「うちで書いてみないか」と。すごくうれしかったけど、いきなりカメラを渡され、観戦記事を書くだけじゃなくて、「試合の写真も撮ってくれ」と。

 撮った写真をパソコンでサイズを合わせたり、入稿作業もやりました。最初は慣れなくて1つの大会を書き上げるまで12時間かかって、バイト代がメチャ安く感じましたよ。

 でも、記者の仕事は今もやっていて、「アメトーーク!」のオーディションで話したらスタッフさんが面白がってくれて、芸人の仕事につながってます。

 先輩のひとりさんとは15年前からかわいがっていただき、ほぼ師弟の関係です。昨年コロナの緊急事態の期間に「生活、大丈夫か」と電話をくださった。
バイトのお金があったので「まだ大丈夫です」と答えたのですが、バイト代が尽きた翌月にも電話をくださり、僕が「もうヤバイです」と正直に答えたら、「口座を教えてくれ。給付金を送るから」と。すぐに「劇団ひとり給付金」が送金されました。

「苦しかったらいつでも言えよ」と言ってくださり……。本当にありがたいですね。まだまったく返せてないので、目標は芸人として売れて、ひとりさんにお金を返したいです。

 (聞き手=松野大介)

▽本名=山田真嗣 1975年11月、大阪府出身。97年から芸人活動。アルバイトで格闘技専門誌に記事を執筆。格闘技大会のリングアナを務めることも。ユーチューブ「神宮寺しし丸チャンネル」「お花くんチャンネル/神宮寺しし丸」配信中。

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