ホロコースト映画が多数公開 いま噛み締めるべき「歴史は繰り返す」の苦き教訓

公開日: 更新日:

 この夏、映画館ではナチスによるホロコースト(大量虐殺)を主題にした作品が相次ぐ。

 まずは第2次世界大戦直後の1945年、収容所で妻子を殺されたユダヤ人がドイツ人への復讐をはじめる「復讐者たち」(公開中)。ナチス残党を処刑しているユダヤ旅団に加わり、さらにより過激なユダヤ人組織「ナカム」に参加していく。これまで映画化されてこなかった、知られざる史実を描いた作品だ。

 強制収容所からの脱走に成功したユダヤ人のリポートによって、12万人のユダヤ人の人命を救ったとの実話を映画化したのが「アウシュヴィッツ・レポート」(30日公開)。脱走に失敗し、見せしめに首つり処刑された収容者の遺体がぶら下がって揺れる場面といい、まさに命がけの脱出劇を当事者2人の目線から描いた映像は息をのむ迫力である。

 8月27日公開の「ホロコーストの罪人」は第2次大戦中、ノルウェー警察がユダヤ人の身柄を拘束し、アウシュビッツへと送り込んだ史実を映画化した。ホロコーストに加担し、ノルウェー最大の罪とされる衝撃の実話だ。終戦から約80年経ってなお、なぜナチスおよびアウシュビッツ収容所などでのホロコースト映画が世界的に製作され続けるのか。「アウシュヴィッツ・レポート」のスロバキア人監督ペテル・べブヤク氏はこう語っている。

「今また世界で極右派、極右政治勢力が台頭し、残念なことに、多くの人々が極右を受け入れ始めています。これがさらなる悪化を招いている。私が今回の作品で最も伝えたいのは、絶対に同じ過ちが繰り返されてはならないということ。映画はエンターテインメントですが、当時の状況を思い出したり、追体験してもらいたい。そもそもの発端が、極右勢力が権力を掌握するのを許してしまったこと。歴史は繰り返すといいますが、見渡すと、それに近い状況になっているではないですか」

東京五輪開会式ではショーディレクターが「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」発言で解任

 開催中の東京五輪では、開会式でショーディレクターを務めていた小林賢太郎氏が若手時代のコント作品で「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」などと、ホロコーストを揶揄していたことが発覚。米国のユダヤ人人権団体が「どんな人にもナチスによるジェノサイドの被害者をあざ笑う権利はない」と非難声明を発表し、小林氏は解任された。

 映画批評家の前田有一氏はこういう。

「欧米では毎年のようにホロコーストをテーマにした作品が作られ続けています。それらの作品群は新事実の発掘や歴史を新たな視点で解釈したりと、極めて今日的かつ普遍的なテーマとして描かれています。ホロコーストの悲劇は決して過去の出来事ではないのです」

 戦後築き上げてきた民主主義が危うい今こそ映画を見て「歴史は繰り返す」という苦い教訓を噛み締めるべきだ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    悠仁さま筑波大進学で起こる“ロイヤルフィーバー”…自宅から1時間半も皇族初「東大卒」断念の納得感

  2. 2

    中山美穂さん急死、自宅浴槽内に座り前のめり状態で…大好きだった“にぎやかな酒”、ヒートショックの可能性も

  3. 3

    辻仁成は「寝耳に水」 中山美穂離婚報道の“舞台裏”

  4. 4

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  5. 5

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  1. 6

    中山美穂さん急逝「加齢の悩み」吐露する飾らなさで好感度アップ…“妹的存在”芸人もSNSに悲痛投稿

  2. 7

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  3. 8

    【独自】急死の中山美穂さん“育ての親”が今朝明かしたデビュー秘話…「両親に立派な家を建ててあげたい!」

  4. 9

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  5. 10

    紅白出演をソデにした旧ジャニーズ痛恨の“判断ミス”…NHKに出たい若手タレントが大量退所危機

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 4

    大山悠輔に続き石川柊太にも逃げられ…巨人がFA市場で嫌われる「まさかの理由」をFA当事者が明かす

  5. 5

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  3. 8

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  4. 9

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 10

    タイでマッサージ施術後の死亡者が相次ぐ…日本の整体やカイロプラクティック、リラクゼーションは大丈夫か?