森田童子の曲は風化することなく聞かれ続ける…リバイバルブームと世相の相関
森田童子の曲は引退後も風化することなく、今も聞かれ続けている。引退から10年後に放送のTBS系ドラマ「高校教師」の主題歌として「ぼくたちの失敗」が流れた際は、100万枚の大ヒットに。その後も映画などで使われては、新たなファンが生まれ、往年のファンを若かりし時代へとタイムスリップさせる。透明感のある美しいソプラノ、切なくも燃え上がる若い恋をつづった歌詞の素晴らしさは言わずもがな。構成作家のチャッピー加藤氏は言う。
■「破滅的な人生を送った父親を通して戦後を見ていた」
「昨年暮れに出版された故なかにし礼氏の未発表作『血の歌』で、実は姪だったという事実が明かされたのは衝撃でした。小説『兄弟』でも描かれた、特攻帰りで放蕩を繰り返し、破滅的な人生を送った兄・正一氏の娘だったとは。小説なので名前は微妙に変えてありますが、これは書いておかないとと思ったのでしょう。その事実を知って、ああ、そういうことだったのかと納得した部分もあります。森田童子は1952年生まれで、全共闘世代よりも少し下ですから、直接闘争したり敗れたわけでもない。それなのに、あのどうしようもない敗北感、途方もない闇は一体どこから生まれてきたのか? そう、敗戦を体験し破滅的な人生を送った父親を通して、戦後を見ていたのです」