著者のコラム一覧
松尾潔音楽プロデューサー

1968年、福岡県出身。早稲田大学卒。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家。MISIA、宇多田ヒカルのデビューにブレーンとして参加。プロデューサー、ソングライターとして、平井堅、CHEMISTRY、SMAP、JUJUらを手がける。EXILE「Ti Amo」(作詞・作曲)で第50回日本レコード大賞「大賞」を受賞。2022年12月、「帰郷」(天童よしみ)で第55回日本作詩大賞受賞。

CHEMISTRY×Da-iCE「スパロウズ」異世代コラボ誕生と楽曲制作への想い

公開日: 更新日:

蕪村とフーコーの幸福な邂逅はドン・キホーテ的かもしれないが…

 それからテレビやライブでの共演を重ねて距離を縮めてきた両グループだったが、ついにオリジナル楽曲を作ることに。Da-iCEからお気に入りとして挙がったのがCHEMISTRY初期のヒット「You Go Your Way」。プロデュースと作詞(当時はペンネームを使っていたが)を手がけたぼくにとっても思い入れのある曲だ。フリーター世代の代表として20代前半でデビューした川畑と堂珍が、40代50代になっても歌い続けるには楽曲の汎用性を高める必要がある。そう考えたぼくが、歌詞の二人称をそれまでの「キミ」から「あなた」に変えた初めての曲でもあった。

 ならば、続編を作ろう。不器用に恋を終わらせた主人公ふたりの今を。失った夢のカケラを丹念に拾い集めて、新しい紋様を編みだすのだ。ポップスの世界では稀だが今回は歌詞に二つの時間軸を共存させたい。もちろん音楽的には「You Go」のツボを含む必要がある。まずは同曲を作曲した豊島吉宏さんに22年ぶりの登板を呼びかけた。

 直感でここまでたどり着けば、その先は先達の知恵を仰ぎ見ながら慎重に完成を目指す。これがぼくのスタイルだ。あと忘れてはいけないのが、ポップミュージックはつねに弱者の側に立つという信条。歌詞設定にあたっては、与謝蕪村の名句『夕立や 草葉をつかむ むら雀』に想を得た。社会の弱者たる主人公ふたりを二羽の雀(スパロウ)にたとえるのは、令和の世にあっても有効なはず。「一羽の雀」という有名なゴスペルもあるではないか。煩雑になりかねない時間軸の共存については、ミシェル・フーコーの名著『知の考古学』にある「言表が帰属する現在とは別の現在」という考え方を大いに参照し、「あったかもしれないもう一つの人生」という副軸を作ることで着地した。

 蕪村とフーコーが幸福な邂逅を遂げるというアイディアは、いささか突飛でドン・キホーテ的かもしれない。だがそんな奇想の受け皿にもなるのがポップミュージックだし、奇想にリアリティを吹き込むのは優れたシンガーだけに許された特権だ。ぜひ実際に聴いて確かめていただきたい。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  2. 2

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  3. 3

    中森明菜が16年ぶりライブ復活! “昭和最高の歌姫”がSNSに飛び交う「別人説」を一蹴する日

  4. 4

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  5. 5

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  1. 6

    田中圭が『悪者』で永野芽郁“二股不倫”騒動はおしまいか? 家族を裏切った重い代償

  2. 7

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  3. 8

    永野芽郁「二股不倫報道」の波紋…ベッキー&唐田えりかと同じ道をたどってしまうのか?

  4. 9

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  5. 10

    紗栄子にあって工藤静香にないものとは? 道休蓮vsKōki,「親の七光」モデルデビューが明暗分かれたワケ

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  2. 2

    紗栄子にあって工藤静香にないものとは? 道休蓮vsKōki,「親の七光」モデルデビューが明暗分かれたワケ

  3. 3

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  4. 4

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  5. 5

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  1. 6

    永野芽郁×田中圭「不倫疑惑」騒動でダメージが大きいのはどっちだ?

  2. 7

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  3. 8

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動

  4. 9

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 10

    永野芽郁がANNで“二股不倫”騒動を謝罪も、清純派イメージ崩壊危機…蒸し返される過去の奔放すぎる行状