碓井広義
著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

竹内涼真が「ペルソナの密告」で圧巻の演技 3つの人格を口調や目つきの変化で表現

公開日: 更新日:

 先週の24日夜、ドラマスペシャル「ペルソナの密告3つの顔をもつ容疑者」(テレビ東京系)が放送された。

 元刑事の獅子舞亘(沢村一樹)は、派遣の仕事をしながら一人娘と暮らしていた。ところが近所で連続誘拐事件が発生。被疑者の元村周太(竹内涼真)から呼び出される形で捜査に協力することになる。しかも元村は複数の人格を持つ解離性同一性障害(DID)だった。かつては「多重人格」と呼ばれていた症例だ。

 7年前、獅子舞の妻(矢田亜希子)は何者かに殺害されており、それをきっかけに退職した。元村もまた幼少時から不幸の連続だった。そんな元刑事と容疑者が一緒に事件を追うという設定が異色で飽きさせない。

 沢村はひょうひょうとしていながら肝のすわった元刑事が似合っていたが、演技賞モノだったのは竹内だ。元村の中には周太本人、数字の天才・カブト、そして凶暴なバクと3つの人格がいる。言うこともやることもバラバラで、突然誰が表に出てくるのか分からない。その都度、口調も動作も目つきも一変させていく竹内の演技が圧巻だった。

 タイトルの「ペルソナ」とは仮面であり、心理学でいう「人間の外的側面」だ。ある時、獅子舞が言う。「人は誰だって、いくつもの顔を使って生きている」と。そうしなければ生きられない人間の業(ごう)に迫る、見事な展開の一本だった。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  2. 2
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  3. 3
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

  4. 4
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 5
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  1. 6
    新婚ホヤホヤ真美子夫人を直撃、米国生活の根幹揺るがす「水原夫人」の離脱

    新婚ホヤホヤ真美子夫人を直撃、米国生活の根幹揺るがす「水原夫人」の離脱

  2. 7
    違法賭博に関与なら出場停止どころか「永久追放処分」まである

    違法賭博に関与なら出場停止どころか「永久追放処分」まである

  3. 8
    大谷翔平のパブリックイメージを壊した水原一平通訳の罪…小栗旬ら芸能人との交流にも冷たい視線

    大谷翔平のパブリックイメージを壊した水原一平通訳の罪…小栗旬ら芸能人との交流にも冷たい視線

  4. 9
    小室圭さんが窮地の大谷翔平の“救世主”に? 新通訳&弁護士就任にファンが期待

    小室圭さんが窮地の大谷翔平の“救世主”に? 新通訳&弁護士就任にファンが期待

  5. 10
    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終

    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終