(4)家畜やペットが感染源に…日本の備えはどうなっているのか
専門家の多くが次の感染爆発の高まりを感じる理由のひとつとするのが人間との距離が近いペットや家畜の感染拡大だ。その体内ではさまざまな遺伝子再集合が行われ、時としてウイルスが動物だけでなく人にも感染できる能力を持つようになる。
その代表例が豚だ。豚は人と鳥のインフルエンザウイルスの両方が感染しやすいことが知られている。豚の呼吸器の細胞は人と鳥のインフルエンザウイルスの両方に感受性をもち、双方のウイルスを効率よく増殖させることができる。
鳥と人のインフルエンザウイルスが同じ豚に同時感染すると、豚の中で両ウイルスに由来するさまざまな遺伝子再集合が生じ、それぞれに由来する遺伝子が混じった新たなウイルスが誕生することがありうる。それが人から人への伝播(でんぱ)性をもつ場合、パンデミックにつながる可能性があり、そのリスクは年々高まっている。
世界保健機関(WHO)はこうした事態に手をこまねいているわけではない。昨年には新たなパンデミックを起こしそうな病原体30種類以上を挙げたリストを発表。今年5月には「パンデミック条約」を全会一致で採択。ワクチン製造技術や知識の途上国への移転、病原体情報を共有する新たな枠組みが盛り込まれた。