人形町の老舗洋食店「来福亭」のメンチ付きオムライスと冷えたビールで整う
ディープな街のディープな店を巡っていると、気持ちが高ぶっているのでそのときは感じないが、帰宅したときに意外と消耗していることに気付く。
それは若い頃、東南アジアや西アフリカの辺境を何週間も旅してローカルな店で飲み食いして帰国したときの感覚に似ている。そんなときは地元の冷房の効いている蕎麦屋なんかで冷たいおろし蕎麦を手繰りながら冷酒をすするとホッとする。
が、店を出る頃にはまた行きたくなる気持ちがもたげてくる。辺境、場末、ディープといった場所には人を夢中にさせる何かがある。そんなわけで今回、いったんホッとするために向かったのは人形町。
人形町はアタシの好きな街だ。時間があるとついフラッと来てぶらぶらしながら粋な酒場で一杯やりたくなる。昔は人形浄瑠璃などの芝居小屋があり、その関係で人形職人が多く住んでいたことから人形町と呼ばれるようになった。今話題の吉原遊郭が元はここにあったことは意外と知られていない。大正時代にはカフェが軒を連ねていたという。人形町のハイカラで艶っぽい雰囲気はその歴史を見ればうなずける。今回はその人形町で明治37年創業、100年以上変わらぬ味を出してくれている洋食の「来福亭」にお邪魔した。