著者のコラム一覧
本多正識漫才作家

1958年、大阪府生まれ。漫才作家。オール阪神・巨人の漫才台本をはじめ、テレビ、ラジオ、新喜劇などの台本を執筆。また吉本NSCの名物講師で、1万人以上の芸人志望生を指導。「素顔の岡村隆史」(ヨシモトブックス)、「笑おうね生きようね いじめられ体験乗り越えて」(小学館)などの著書がある。新著「1秒で答えをつくる力──お笑い芸人が学ぶ『切り返し』のプロになる48の技術」(ダイヤモンド社)が発売中。

「ライオン」と呼ばれた吉本興業元会長の林正之助さんと初めて話した時のこと

公開日: 更新日:

 今考えても、よくあんな大胆な行動がとれたなと当時の緊張と共に、頭を下げられた姿とかけてくださった言葉がそのまま蘇ってきます。わずか10秒たらずの時間でしたが、「剛腕」「ワンマン」「ライオン」と恐れられていた会長の笑いに対する真摯な姿勢が見られたことにうれしさを感じています。

 後年、NSCの講師になった当時の担当者が若かりし林元会長の“番頭”さんだった方で、

「おやっさん(林元会長)はそらええ度胸してたで。他の興行師からいつ襲われるかわからへんから、外へ出るときはさらしに濡らした紙を巻き込んで腹に巻いて、いつ刺されても大ケガをせんようにしてピリピリしながら出て行ったはったで。わし(担当者)ら怖いさかいビクビクしとったけど、悠然と構えてな。それこそ毎日が命がけやがな。それで今の吉本があるんやさかい。大したもんやで」

 と教えていただき、エレベーターでの話をすると、

「よぅそんな怖いことするわ! アンタ見た目と違ごて度胸ありまんねんな!」

 とあきれられました。私としてはわずかな時間でもそんな元会長とやりとりができて良かった、と改めて思ったものです。

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