「ライオン」と呼ばれた吉本興業元会長の林正之助さんと初めて話した時のこと
今考えても、よくあんな大胆な行動がとれたなと当時の緊張と共に、頭を下げられた姿とかけてくださった言葉がそのまま蘇ってきます。わずか10秒たらずの時間でしたが、「剛腕」「ワンマン」「ライオン」と恐れられていた会長の笑いに対する真摯な姿勢が見られたことにうれしさを感じています。
後年、NSCの講師になった当時の担当者が若かりし林元会長の“番頭”さんだった方で、
「おやっさん(林元会長)はそらええ度胸してたで。他の興行師からいつ襲われるかわからへんから、外へ出るときはさらしに濡らした紙を巻き込んで腹に巻いて、いつ刺されても大ケガをせんようにしてピリピリしながら出て行ったはったで。わし(担当者)ら怖いさかいビクビクしとったけど、悠然と構えてな。それこそ毎日が命がけやがな。それで今の吉本があるんやさかい。大したもんやで」
と教えていただき、エレベーターでの話をすると、
「よぅそんな怖いことするわ! アンタ見た目と違ごて度胸ありまんねんな!」
とあきれられました。私としてはわずかな時間でもそんな元会長とやりとりができて良かった、と改めて思ったものです。