半世紀前のこの国で夢のような音楽が本当につくられていた
続いて登場するのは矢沢永吉。歌い終わったユーミンがMCで「『ルージュの伝言』は永ちゃんから聞いたエピソードから作りました」と話す。
対して永ちゃんは、「でも最近は妻に、毎日こう言ってます」と言って「アイ・ラヴ・ユー、OK」を歌い始める。
その後、井上陽水が、ゆっくりと登場。サディスティック・ミカ・バンド解散後すぐの後藤次利と高中正義をバックに「青空、ひとりきり」を決める。
トリは中島みゆきだ。バックには、いつのまにかオーケストラが控えていたが、中島みゆきは、指揮者に耳打ちをして、オーケストラではなく、自らのギター1本だけで「時代」を歌い上げる。
「♪まわるまわるよ時代は回る」──このリフレインを彼女は何度も何度も繰り返す。
そして「まわる」が50回を数えたとき、瞬時に50年、半世紀の時が過ぎ去り、私は2025年の年末に舞い戻った。
「1975年、めっちゃ楽しかった……」
私は気分がよくなり、一杯やろうかと思うのだが、でも結局、杯を置く──「よそう。また夢になっちまうといけねえ」。


















