なにわ男子・長尾謙杜の“あだ討ち”から始まる江戸ミステリー「木挽町のあだ討ち」

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東映京都撮影所が“攻め”に出た意欲作

 指紋捜査も正確な時間を示すアリバイ作りもない江戸時代を背景に、本格ミステリーを描くのは至難の業。しかしここでは、物語の舞台と人間関係を「森田座」周辺に限定し、芝居小屋の裏側をディテール細かに映し出すことで、合理性のある謎解きミステリーにしている。

 柄本佑は呼び込みの木戸芸者(瀬戸康史)、立ち回りの立師(滝藤賢一)、元・女形の衣裳方(高橋和也)、小道具方(正名僕藏)から話を聞いて、謎の核心に迫っていくのだが、映画「国宝」を見て歌舞伎に興味を持った人には、同作に描かれた古典芸能として格式を持った昭和の歌舞伎とは違った、庶民の娯楽としてもっと身近だった江戸時代の歌舞伎の匂いを感じ取れるだろう。その芝居小屋にうごめく人々は、社会からはみ出たアウトローのような存在。彼らの中心にいるのが元武士の戯作者・篠田金冶で、渡辺健演じるこの人物が、脛に傷を持つアウトローや弱者を助けるキーマンとして描かれる。

 後半には「仮名手本忠臣蔵」の一場面も登場し、そこでは大星由良助(いわゆる大石句碑蔵助)役で冨家ノリマサが登場。菊之助の父親を山口馬木也が演じるなど、「侍タイムスリッパー」の俳優たちも顔を見せるこの作品、歌舞伎、ミステリー、近年の時代劇のトレンド俳優の出演と、今の時代に見合った空気を取り入れていて、東映京都撮影所製作の映画では“攻め”に出た意欲的な1本だ。東映京都撮影所は、その前身の阪東妻三郎プロアクションが撮影所を作ってから、100周年を迎えた。この節目の年を飾るのにふさわしい、新たな娯楽作品が誕生した。

(金澤誠/映画ライター)

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