「いまのところ」中西茂樹(なすなかにし)著
「いまのところ」中西茂樹(なすなかにし)著
書店員芸人という肩書を持っている上で推理小説も書いているので、おまえは一体何が本職なんだと思われそうなのではっきりさせたいのだが、一番重きを置いているのは芸人活動である。松竹芸能に長年お世話になっている。今回はそんな弊社の尊敬すべき先輩であり、看板芸人の一組と言って差し支えない漫才師「なすなかにし」のボケ、中西さんのエッセーを紹介したい。
本著は中西さんの半生をつづったものであるが、同時に漫才コンビ「なすなかにし」の半生も語られている一冊だ。
実のいとこ同士であるお2人の漫才は、まさに息の合った掛け合いが心地よく、関西ならではの伝統的な雰囲気も感じられる。上方漫才大賞で新人賞受賞や、奨励賞の候補に幾度も挙がるほど漫才師としての実力も認められているなすなかにしさん。2020年ごろからはバラエティー番組でロケの達人としてもお茶の間を賑わしていく。我々後輩にも優しく理想の漫才師だ。ちなみにお笑いコンビはビジネスライクになりがちなのだが、お2人は子どもの頃から現在まで本当に仲が良い。そこも稀有な存在だ。
本著の中で中西さんは子どもの頃から独自の遊びを考えるのが好きだったと書いている。それが芸人になっても生かされていて「オリジナルゲーム」という名作漫才や実際にカードゲームを開発し、販売もされた。三つ子の魂百までを体現している先輩である。
順風満帆に見えるだろうが、この後にまさかのピンチが訪れる。著者の相方である那須さんが脳梗塞で倒れたのだ。いつ戻ってくるかも分からない。結果またお2人で漫才が出来るまで回復するのだが、それまで数年、なすなかにしという看板を守り続けた中西さんの苦労は想像に難くない。復帰後の漫才を舞台袖で見させてもらったが、あんなに感動的でウケまくってる漫才は見たことがない。
この記事を読んでる皆さんは仕事仲間に絆を感じているだろうか。そんなのむしろ邪魔だ、ドライに仕事する方が結果が出るだろうと思っている人もいるかもしれない。だが絆が時として素晴らしいパフォーマンスを生み出すことを漫才師なすなかにしは教えてくれる。お笑いだけでなく全てのお仕事に通じている。ぜひ読んでほしい。 (双葉社 1595円)



















