【ブーニン 天才ピアニストの沈黙と再生】左足を切除したショッキング映像
全国公開中/配給:KADOKAWA
筆者はこれまでピアノという楽器と無縁な人生を歩んできた。そのためピアノの鍵盤も触ったことがない。恥ずかしながら「猫踏んじゃった」も弾けない。クラシック音楽についてはチンプンカンだ。
だからスタニスラフ・ブーニンの名前は聞いていたものの、どんな人物なのかはよく知らなかった。そうした無知な状態で本作「ブーニン 天才ピアニストの沈黙と再生』を見学。至高の芸術家が直面する苦悩をうかがい知ることができた。
本作は「プロフェッショナル 仕事の流儀」などを手がけた中嶋梓監督によるドキュメンタリー。NHKエンタープライズが制作した。昨年12月にサントリーホールで行われた最新の演奏も収録された、撮りたてのホヤホヤの作品である。
ブーニンは1966年、モスクワ生まれ。19歳でショパン国際ピアノコンクールで優勝して世界中をあっと言わせた。日本では「ブーニン・ブーム」と称される社会現象が熱狂の渦を呼び、世界を股にかけ華々しい活躍を続けたブーニンだったが、2013年、突如として表舞台から姿を消してしまう。
9年にわたる長い沈黙期間、度重なるケガや病に襲われ、左足首の一部を切断。さまざまな困難を抱えながらも懸命なリハビリを続け、2022年に表舞台への復帰を果たしたのだった――。
日本でブーニンのブームが起きたのは1980年代だった。90年ごろだったか、週刊誌がブームの様子を報じていた。まもなく開催されるコンサートが話題で、ふだんはクラシックと縁の遠い銀座のクラブママがプラチナチケット獲得に狂奔しているという。筆者は読み終わって「へぇ~」とうなり、クスッと笑ってしまった。ブームとは面白いものだ。


















