【ブーニン 天才ピアニストの沈黙と再生】左足を切除したショッキング映像

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ブーニンの半生が日本人妻・榮子の存在を通じて語られる

 19歳で栄冠をつかんだ新進気鋭のピアニストは快進撃を続ける。だがその先には左手のしびれが待ち受け、さらには左足の一部を切除するという悲劇が待ち構えていた。ブーニンが失った8センチを補うために高下駄のような靴を履く場面は実にショッキングだ。ベートーベンの難聴ではないが、天才の人生は不運と裏返しなのかもしれない。

 しかもブーニンは納得できる演奏が望めないとして「別れの曲」から遠ざかる。天才は自己を研鑽するために孤独な苦悩を味わうのだろう。筆者のような凡夫には到底理解できない心の深淵だ。

 思うに、一流の芸術家は映像作品にとって格好の題材なのだろう。そうした映像を見ることによって、我々はふだん見られない芸術家の内面を覗き見ることになる。

 ブーニンは1988年、旧ソ連から亡命した。それまでの彼は常にKGBの監視下にあったそうだ。亡命の3年後、社会主義国ソ連は崩壊。音楽だけでなく、政治面からのアタックも興味深い。

 こうしたブーニンの半生が日本人妻・榮子の存在を通じて語られる。彼が榮子と結婚したおかげで、観客は日本人の目で見た天才の真像を知ることができるわけだ。

 ブーニンは現在59歳。この先どのような困難に直面するのか。観客は彼の人生から目が離せなくなる。

(文=森田健司)

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