【しあわせな選択】失業中の男がライバルを狙うブラックコメディー

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男というのは追い詰められるとここまで理性を失うのか

 予告編のミリがマンスに「皆殺しにするの」とささやく場面からも分かるように、追い詰められた男がライバルを手にかけようとする物語だ。「たかが再就職くらいで」と笑ってしまうが、家族を守ることを最大の使命と考える男はそれなりの報酬を稼がなければならない。それが家長の責務と考えたとき、心の中にワイルドな策謀が発生して暴走。だから良心と闘いながらも悪辣な道に引きずり込まれる。男というのは追い詰められるとここまで理性を失うのかと呆れてしまう。

 一方、ミリは夫の焦燥に気づかない。主人公夫妻のすれ違いという皮肉のかたわら、マンスが狙う男たちもそれぞれに苦心している。そうした登場人物たちの裏事情が面白い。本作を見ながら「男はつらいよなぁ」と呟いてしまった。シニカルな問題作といえるだろう。

 かくしてマンスはドタバタの陰謀劇を展開。終盤は息もつけないスピード感で観客を劇中に引き込み、ラストに至る。この結末こそがしあわせな選択なのだろうか。筆者はなぜか「ゴッドファーザー」(1972年)のラストを思い出した。夫マイケルを見つめるダイアン・キートンの表情がミリとダブって見えたのだ。本欄の読者はどんな印象を受けるだろうか。(配給:キノフィルムズ)

(文=森田健司)

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