萩本欽一〈60〉細川たかし「北酒場」誕生の裏に因縁の有名作曲家…「一切知らなかった」仰天の巡り合わせ
「俺の経験では当たらない」
萩本「こういうことで頼まれてやったものって、俺の経験では当たらないのよ。中村さんには申し訳ないと思ったよ。やりますみたいなこと言ったのに。でも当たらないと思ったから、やめた」
増田「その曲は『北酒場』ではない?」
萩本「違う違う。全然別の曲」
増田「では、そこで中村さんとの話はいったん終わった」
萩本「そう。それから『北酒場』を番組でやることになった。俺は笑いだけじゃなくて、歌をやって、そこから何か考えようと思ったの。それで周防さんに『明るい演歌ない?』って言ったんです」
増田「すると」
萩本「『あるよ』って。俺は『あるよじゃなくて、作ってほしいんだ』って言ったら、『ある』って。それで持ってきた曲を聴いたら、明るいの。『ああ、明るいね』って。それでやった」
増田「それが中村泰士さんの曲だったと」
萩本「そうなんです」
増田「でも、その段階では誰が作曲したか知らなかったと」
萩本「知らない。レコードを持ってきたわけじゃないから。曲を聴いて『これいいね』ってやってるだけ。誰が書いたとか、誰が作ったとか気にしてないの」
増田「まったく?」
萩本「まったく知らなかった」
増田「すごい巡り合わせですね」
萩本「そうでしょ。運て、そういうものなの」
(つづく=火・木曜公開)
▽はぎもと・きんいち 1941年、東京都生まれ。高校卒業後、浅草での修行を経て、66年にコント55号を結成。故・坂上二郎さんとのコンビで一世を風靡した。その後、タレント、司会者としてテレビ界を席巻し、80年代には週3本の冠番組の視聴率がすべて30%を超え、「視聴率100%男」の異名をとった。社会人野球「茨城ゴールデンゴールズ」の初代監督、2015年には73歳で駒澤大学仏教学部に入学するなど挑戦を続け、25年10月にスタートしたBS日テレ「9階のハギモトさん!」は今年4月からSEASON3に突入した。
▽ますだ・としなり 1965年、愛知県生まれ。小説家。北海道大学中退。中日新聞社時代の2006年「シャトゥーン ヒグマの森」でこのミステリーがすごい!大賞優秀賞を受賞してデビュー。12年「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか」で大宅壮一賞と新潮ドキュメント賞をダブル受賞。3月に上梓した「警察官の心臓」(講談社)が発売中。現在、拓殖大学客員教授。



















