安部龍太郎(作家)「シルクロード流沙万里の路」はシルクロード調査の成果の集大成
10月×日 朝起きたら一番にブッダ占いをするようになって久しい。「ブッダのことば スッタニパータ」(中村元訳 岩波書店 1353円)を任意に開き、そこに書かれてある項目を1日の戒めにするのである。
この本はブッダが修行僧や聴衆と語り合った記録で、仏典の中でももっとも早い時期に成立したと言われている。
この日は第70項「妄執の消滅を求めて、怠らず、明敏であって、学ぶこと深く、こころをとどめ、理法を明らかに知り、自制し、努力して、犀(さい)の角のようにただ独り歩め」だった。
10月×日 占いは664項「口穢(くちぎたな)く、不実で、卑しい者よ。生きものを殺し、邪悪で、悪行をなす者よ。下劣を極め、不吉な、でき損ないよ。この世であまりおしゃべりするな。お前は地獄に堕ちる者だぞ」
この日、山田勝久先生から新刊「シルクロード流沙万里の路」(笠間書院 2640円)を送っていただいた。先生とは昨年9月にシルクロードの旅をご一緒した。カシュガルから敦煌まで西域南道をたどる12日間の旅である。
先生にとってこれが68回目のシルクロード調査で、本書はその成果の集大成といえるものだ。仏教伝来の跡をたどる旅でもあり、美しい貴重な写真もたくさん収録されている。
10月×日 占いは1094項「いかなる所有もなく、執着して取ることがないこと、──これが洲(避難所)にほかならない。それをニルヴァーナと呼ぶ。それは老衰と死との消滅である」
澤田瞳子さんの「隠元」(文藝春秋 2420円)を読む。江戸時代初期に明国から渡来し、黄檗宗(おうばくしゅう)を伝えた隠元禅師の姿を、寺男となった快鳳(かいほう)の視点から活写している。
悟りとは何か、人が生きる意味は何か。隠元の側にいるからこそ悩み苦しむ快鳳や弟子たちの姿を、重厚な筆致で丹念に描き出していく。中でも「沈む萩」の章の、嵐に巻き込まれるシーンは秀逸である。



















