「諸星」(神奈川・新子安)酒屋から約100年 コロナ禍で生まれた「もつのにこみ」の新しい食べ方
年季が入ったのれんとぬくもりを感じる赤ちょうちん。仕事を終えた夕暮れに、レトロ酒場の前を通りかかったら、扉を開けずにはいられない。いらっしゃい!カウンター席に腰を下ろす。この雰囲気、乾杯するなら瓶ビールだ。
◇ ◇ ◇
JR京浜東北線新子安駅の近くにある「市民酒蔵 諸星(もろほし)」は、昭和初期に初代が始めた酒屋がルーツ。その角打ちが姿を変え、1964年に現在のスタイルになった。
「入り口は以前、木の引き戸でしたが、元々、砂利道だったため、車が通るたびに小石がバンバン当たって、戸がボコボコになっちゃった」とは3代目の諸星道治さん。入り口をサッシ戸に替えた以外は昔のままだ。
店内は、ヒノキカウンターが奥に向かって7メートル。対面で座る。カウンターと並行する壁は、酒屋の面影を残す酒の棚で、毛筆の品書きが上下2段すき間なく並ぶ。
横浜の市民酒場は1938年に設立された横浜市民酒場組合が原点で、適正価格で酒を提供する店を指す。近くの工場で働く人などがカウンター越しに酒を酌み交わしていた光景が目に浮かぶ。この雰囲気なら瓶ビールだ。瓶は上開き冷蔵庫の中で冷水で冷やす。
「水冷の方が早く冷えるんだよ」(諸星さん)
冷えたキリンラガー770円ののど越しがたまらない。40種類以上の料理は唐揚げ520円、シウマイ480円、アジフライ400円……と目移りする中、創業時からの唯一のメニューが、もつのにこみ540円。牛モツとコンニャクのみを赤味噌ベースで煮込む。話には続きがあった。
「東急東横線の白楽駅前にあるパン屋の主人が常連で、せがれが店を継ぐことに。コロナ禍で彼の手助けもあって、仕入れることにしたんだ」と諸星さん。それが塩バターパン200円。モチモチのパンを2つに割り、その中心に煮込みを詰めて食べる。ビーフシチューをパンで食べるような感覚でうまい。大瓶はあっという間に空だ。
川崎の南部市場から仕入れる刺し身はこの日、シャコ660円、赤貝520円、マグロ570円、アジ570円など7種。その中からカツオ570円も注文する。キラキラと輝く赤身は新鮮そのもの。ニンニクしょうゆで口に運べば、旬のうまみが広がった。
「最近は瓶ビールを飲みたくて来られる若者も増えました」(諸星さん) 酒屋から数えて100年近い店は、今日も活気に満ちている。
■「諸星」
(住)神奈川県横浜市神奈川区子安通3-289
(℡)045-441-0840
(営)午後4時30分~10時
(休)土曜、日曜、祝日
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