映画批評家・前田有一氏が厳選 「映画三昧」で行く年来る年
■韓国版“阿部定”「メビウスの狂気」
さらなる刺激がほしいなら「メビウス」(韓国、83分)以外にない。浮気に気付いた妻が夫の就寝中、男性器を切り落とそうとする韓国版・阿部定。幸い直前で気付き股間防衛に成功するが、妻は何を思ったか隣の部屋に駆け込み、なんと息子のアレを切り落としてしまう。韓国一の鬼才キム・ギドクが一切のセリフなしで叩き付ける前衛的なドラマで、過激さゆえ5分間ほどカットされたことも話題を呼んだ。この日本専用バージョンは、それでもギリギリR18+指定での公開となっている。
そんな刃傷沙汰よりある意味恐ろしいのが「私の恋活ダイアリー」(イスラエル、70分)。人生のパートナーを探し求めるイスラエルのある女性映画監督の悪戦苦闘を、自らカメラに収めたドキュメンタリー。問題はこの女性が、バツあり子持ち孫持ちの60歳ということだ。まずはシャツの胸元をはだけた「勝負写真」で出会い系サイトに登録。写メ詐欺寸前の力技で次々とデートしたのはいいものの、毎回最後にこっぴどく断られるさまは自虐的コメディーそのもの。それでもめげないオンナの性には、誰もが圧倒されるに違いない。やがて酒の勢いで男をソファに引きずり込む場面のその先は、官能ドラマかはたまたホラーか!?