著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

反論はしない 親の自慢話に「またその話?」は絶対に禁句

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 実際、医療の現場でも昔話をさせることが、認知症患者の症状緩和策、改善策として有効であることが広く認められている。「回想法」と呼ばれ、1960年代にアメリカで提唱された。もともとは「うつ」の治療法だったが、認知機能の低下予防、改善に有効であることが認められ始め、現在では介護施設などにも導入されている。

 幸せだった過去、意欲的に生きていた過去を思い出して、本人がカンファタブル(快適)になることで、脳の老化を遅らせる効果があるのだ。誰かを相手に昔話を「話す」「聞く」という機会が増えれば、何かを思い出そうとしたり、相手の話を理解しようとしたりして、脳の活性化が促され、機能の低下を防ぐことになるわけだ。

 もちろん、この「回想法」は本来「うつ」や不安の改善に有効とされたものだから、当然、「老人性うつ」の症状が疑われる高齢者にも有効だ。

 だからこそ、高齢な親、とりわけ認知症の親の昔話に対して、子どもは冷ややかな態度で接してはならないのだ。もちろん、会議や討論の場ではないのだから、白黒つけるような姿勢は厳禁だ。まずは聞くことに重点をおく。「聞く9割、相づち1割、反論0割」くらいでいい。

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