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荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

【ニパウイルス感染症】有効な治療薬がなく致死率は40~75%と高い

公開日: 更新日:

「ニパウイルス感染症」をご存じでしょうか? 今後、世界でアウトブレークするかもしれない新種のニパウイルスによる感染症です。

 ニパウイルスは1998年にマレーシアで発見されました。同国で流行した原因不明の脳炎を引き起こした“犯人”でした。ウイルスが分離されたバル・スンガイ・ニパ村の名前から取って、99年4月にニパウイルスという名が付けられました。

 ニパウイルスはもともとはコウモリに感染するウイルスですが、ブタにも感染することがあり、感染したブタの気道分泌物や尿からも感染するため養豚業者などでのアウトブレークも知られています。

 主な感染経路は「コウモリからヒト」「コウモリからブタを介してヒト」「感染したヒトからヒト」が報告されています。当時のマレーシア政府は、感染源となったブタの殺処分を行い、ヒトへの感染経路を遮断しました。しかし、その後もバングラデシュやインドで発生報告が続き、2014年にはフィリピンでも発生が確認されています。

 ヒトにおけるニパウイルス感染では、無症候性(不顕性)感染から急性呼吸器感染症や致死性脳炎まで幅広い臨床症状を引き起こすことが知られています。発症してしまうと致死的な経過をたどることもあり、致死率は推計40~75%と高く、日本では03年に4類感染症に指定されました。

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