著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

“治療”も気から…「プラセボ」は悪いわけではない

公開日: 更新日:

 ではプラセボは臨床試験だけの話なのかというと、そうではありません。みなさんのほとんどは、なんらかの痛みがあるときに痛み止めのクスリを頓服として服用したことがあるのではないでしょうか? そのときに、服用して10分もしないうちに「あ、痛み止め効いてきた」と感じた経験があると思います。これもじつはプラセボ効果によるものです。

 多くのクスリ(内服薬)は、服用して効果を発揮するまでに30分以上の時間を要します。クスリは、服用して、溶けて、吸収され、成分が体中に広がって(分布)、初めて効果を発揮するのです。この過程は10分程度で完了するものではなく、もっと時間がかかります。ですので、服用してすぐに効果を実感しているのは、クスリというよりは「クスリを使った安心感」からくるプラセボ効果によるところが大きいのです。

 だからといって、プラセボが“悪い”わけではありません。暗示といった心の影響とはいえ、効果を実感できるのはさまざまな点でプラスになります。こんなことをいっている私自身も、クスリのプラセボ効果をしっかり享受しています。

「信じる者は救われる」という言葉があります。「病は気から」と同じように、「治療も気から」は大事といえるでしょう。みなさんは使っているクスリの効果を信じていますか? 強く信じたほうが、より効果が得られるかもしれませんよ。

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