洋食にもマッチする 強烈な酸味の個性派「純米アフス生」
日本酒の美点は「酒屋万流」、酒ごとの豊かな個性にある。ところが、このところ大手を振っているのは、香って甘酸っぱい酒ばかり。サワー系酎ハイ人気にあやかろうということなのか?
だが、そんな酒の多くが奥行きに欠け、薄っぺらなのが気にかかる。うまい酒は重層的かつ複雑な風味を備え、味わいの幅が分厚い。トータルバランスで甘・辛・酸・苦・渋が高いレベルで拮抗している。
心ある蔵は味わいの演出にも知恵と技術を絞っており、そのアプローチの違いを堪能するのが、日本酒を呑む楽しみであり喜びといえよう。
たとえば「十四代」の香り、「村祐」の甘味、「新政」の酸味はいずれも、くどさとは無縁で気品すら漂う。オリジナリティーたっぷりながら、決して悪目立ちしない。これらを先導役にし、ほかの風味が絶妙のアレンジで迫ってくる。ついつい2杯3杯と杯が進む。
そんな銘酒が覇を競う中、極めつきの個性派が「アフス」。口にすればだれもがまず、強烈な酸味に目をみはるはず。だが「アフス」は奇をてらった酒にあらず。高い完成度と後を引くうまさに魅了されてしまう。