「串タロー」など展開 「スターツ」の柴田育男社長の巻<5>
小料理 kokoro(東京・西新宿)
仕事を終えて女将さんの店で一杯飲むと、ホッと落ち着きます。こちらの店も、そんな店です。カウンター10席と向かい合わせ2人掛けのテーブルが1つ。女将さんひとりで切り盛りしているだけに、カウンター中心です。
料理は、加賀野菜を中心とした品揃え。たとえば、この日のポテサラ(680円)に使われている芋は地元の五郎島金時でサツマイモ。ほどよい甘さとホクホクした食感が特徴とか。シイタケのバター醤油(1個580円)は、原木生シイタケとして知られる、のと115で、スーパーのぺらぺらとは一線を画す存在感です。
からし菜のおひたし(580円)もいいし、あいまぜ(580円)もいい。あいまぜは、大根やニンジン、ゴボウなど根菜を煮込んだ伝統料理。
ひと工夫された加賀野菜と気配りにホッとする
聞けば、女将さんは金沢出身で、実家は八百屋さん。近江市場の仲買人だったとか。なるほど、貴重な加賀野菜がふんだんに使われているわけです。
「おひとりさまには、1人分にしてお出しすることもできます」
この気遣いがいい。お客さんをお連れすると、どの料理も、それぞれ1人分に分けてくれます。友達同士なら遠慮せずに一皿をつつくことができても、男性同士で相手がお客さんだと“遠慮のかたまり”が残ってしまうことはよくありますからね。こういうちょっとした気遣いは、たまりません。
日本酒は純米酒のみ。女将さんが熱燗好きとあって、迷ったら熱燗がいい。「これが好きすぎて蔵元さんとコラボしちゃったんです」と出してくれたのは、島根の天穏でした。一升瓶には、蔵元と店の屋号が描かれています。お邪魔した少し前は、「イベントにも出させていただきました」と笑顔に。
もちろん、ビール(600円)やレモンサワー(600円)も揃えています。でも、こちらではお薦めの日本酒か、あるいは「自然派のみ」というワインにするといいでしょう。ご機嫌でチョイスしてもらえます。
日本酒は半合450円~、ワインはグラス600円~。良心的な値付けです。
加賀といえば、名物は治部煮(1280円)。鶏と車麩がほっくりと煮込まれていて、いいあんばい。鶏の唐揚げ(980円)は、和山椒がアクセントに。でも、金沢春菊と豚肉の春巻き(680円)も気になる。
「春巻きはきょうで終わりなので、しばらく食べられませんよ」
じゃあ、春巻きで。日本酒をちびちびやってしゃべりながら待っていると、「ヤケドしないでください」と2つに切り分けられた1本が。はふはふして口に運ぶと、春菊の茎が歯触りよく、豚肉はしっとり。ん、ひょっとしてリエット風?
「そうなんです。だから手間がかかって。それでお休みです」
フレンチ出身のオーナーシェフの店での修業経験が生かされています。ちょっとした気配りと工夫がよく、応援したくなるお店です。
(取材協力・キイストン)
▽小料理 kokoro(東京・西新宿)
東京都新宿区西新宿7―9―15 新宿ダイカンプラザビジネス清田ビル102
℡03・6279・2407
▽スターツ新宿に「串タロー」を6店舗展開するほか、もつ鍋「金太郎」2店なども運営する。
▽しばた・いくお 中央大学を卒業後はセブン―イレブンに入社するも3年で退職。友人の串焼き店で修業し、1985年に目白に「串タロー」をオープン。キャリア35年で1店の退店もない。「契約の問題で目白の店は閉めましたが、退店ではない」