「串タロー」など展開 「スターツ」の柴田育男社長の巻<4>
wine&whisky BAR W(東京・西新宿)
ハイボールが定着したのに加え、世界的なウイスキーブームもあり、原酒は争奪戦状態。メーカーはウハウハかと思いきや、必ずしもそうではなく、国産では人気銘柄の販売中止や休止が相次いでいます。熟成に長い年数が必要で、ウイスキーはすぐには増産できないためです。
そんな状況でバーにとっては、仕入れ値が高騰し、大変なはずですが、ここはとても良心的な料金でウイスキーが楽しめます。
たとえば、人気のシングルモルトでいえば、ピートの香りが特徴のアイラ島の定番ラフロイグ10年は1000円で、よりスモーキーなアードベッグ10年は1150円。バーはメニューの用意がない店がほとんどですが、ここはシングルモルトならエリアごとに銘柄と価格が表記されていて、初心者でも安心です。
アイラ島は、アイラ島以外の島々を表すアイランズと含めて13銘柄の品ぞろえ。ほかにスペイサイド、ハイランドなども20種類近くあります。もちろん、ブレンデッドやバーボンなども抜かりありません。六本木や銀座の名店のバックバーにはかないませんが、十分目移りする眺めです。
オーナーの嶋田さんはバーテンダーとして経験が豊かで、先日お邪魔したときは黒板にイチゴのカクテル(1200円)やキンカンのジントニック(1000円)といった旬のフルーツを用いたカクテルも。若い方は、レモンのカクテルで疲れを癒やしていました。
そんなふうに言うと、紳士ぶっていますが、しょせん、僕は酒飲み。ロックグラスの氷がカチッと解ける音を聞きながら飲むようなことは、できません。仲間と飲んだ後にもう一杯、マスターと語らいながら飲むのが定番です。
7席ほどのカウンターは常連さん同士が語り合い、マスターと話す社交場のような空間。それがいいんです。肩肘張らずに飲める落ち着いた空間に夜な夜な常連さんが訪れます。つかず離れず、厳粛すぎず砕けすぎず。こういうバーは、珍しいと思います。
2軒目だって、時には腹が減る。マスターはイタリアンの経験もあり、レバーパテ(780円)やオイルサーディン(780円)などの前菜をはじめ、イベリコ豚のカルビコロッケ(1個430円)、日南どりのチキンカレー(980円)など腹にたまるメニューがあるのもうれしい。
これも、この店をプッシュする理由で、僕のイチオシはどろぶたのハンバーグ(1380円)。一口含めば分かりますが、ウマ味が強烈で、独特の甘味を感じます。少量のハチミツは使っているそうですが、ハチミツとはまったく違うウマ味と甘味。それが、この豚の特徴だとか。
北海道・帯広の広い大地で、一般の豚より2カ月長い8カ月を放牧期間に充てることで肉質が変わり、ウマ味を引き出すそうです。
そんな店ですから、料理に合うワインも充実。重めの赤をお願いすると、ル・オー・メドック・ド・ジスクール2013が注がれました。メルローとカベルネソービニヨンの一杯は、しっかりとしながらもなめらかでハンバーグに最適。バーという名のレストランです。
(取材協力・キイストン)