「007」ボンドが愛したニット エヌピールを着て公開を待つ
「007ジェームズ・ボンド」と聞いて、役者は誰を思い浮かべるだろうか。第1作から7作まで(第6作を除く)を務めたのは昨年亡くなったショーン・コネリーだ。かっぷくが良く、骨太な印象で、古い映画の「銀幕スター」という印象の名優であった。
筆者にリアリティーがあるのはロジャー・ムーアで、ロードショーで見たボンドは甘いマスクの美男子だった。キザでニヒルなモテ男は、70年代から80年代の男たちの憧れを具現化したものであろう。
近年のダニエル・クレイグはどちらかというと言葉少ないクールな男で淡々とマシンのように任務をこなすイメージだが、ファッションは最新のモードをまとっていて、それまでの頑固一徹クラシックなボンド像を改革したといっていい。
ショーン・コネリー時代のボンドはサヴィル・ロウのテーラー仕立てという設定でアンソニー・シンクレアが担当した。しかし当時は最新でも、今見ると少々古くさいのは否めない。ロジャー・ムーアのスーツはイタリアメードで、甘いマスクの彼にふさわしい装いだった。