山田一仁
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山田一仁フォトジャーナリスト

1957年1月1日生まれ。岐阜県出身。千葉大工学部画像工学科卒業後、文藝春秋社に入社。フリーランスとして五輪はロス、ソウル、バルセロナ、シドニー、カルガリ、リレハンメルなど取材。サッカーW杯は1990年イタリア大会から、ユーロは1996年英国大会から取材。89年のベルリンの壁、ルーマニア革命、91年ソ連クーデター、93年ロシア内紛、95年チェチェン紛争など現地取材。英プレミアリーグの撮影ライセンスを日本人フリーランスカメラマンとして唯一保有。Jリーグ岐阜のオフィシャルカメラマンを務めている。

<1>ロンドンの接種会場で副反応でぶっ倒れた男性を目の当たりに

公開日: 更新日:

【5月29日】

 フォトグラファーの私は、ポルトガルの港町ポルトにいた。

 欧州チャンピオンズリーグ(以下CL)の決勝戦(マンチェスター・シティvsチェルシー)を撮影するためである。

 いつものCLの決勝戦には、150人~200人ほどのフォトグラファーが欧州中から、いや、世界中から集まってくる。

 しかし、コロナ禍の真っ只中、無観客で行われた2020年の決勝戦は、主催する欧州サッカー連盟(UEFA)と決勝進出クラブのオフィシャルフォトグラファー、あとは大手通信社のフォトグラファーにしか撮影許可が下りなかった。我々フリーランスには、取材申請の機会さえも与えられなかった。

 今回は、対戦する両チームに6000人ずつのサポーターにスタジアム観戦が認められた。

「フォトグラファーの制限も少しは緩和されるのではないか」と思いながらUEFAに確認すると「あなたは常にCLの決勝を取材している(2020年を例外として26季連続取材)し、他にも(欧州ELや欧州選手権といった)UEFAの主催大会を取材しているので申請だけは許可します。しかしながら、決勝の撮影が許可されるかどうかは確約できません」という回答が返ってきた。

 5月25日に撮影許可の連絡が届いた。決勝の撮影が許可されたのは16名だけ。たった16人のひとりになれたわけだから、これはもうポルトに行くしかないだろう。

 英国在住30年の私のUEFA登録は、イングランドのメディアとなっている(近年は親の介護もあって日本中心の生活を送っているがーー)。決勝戦の撮影ができることになったのは、対戦カードがイングランド勢同士だったことも幸運だった。

 ちなみにポルトガルに入国する場合、到着する72時間前までに受けた「PCR検査の陰性証明」を持っている者だけが、ポルトガル行きのフライトに乗せてもらえる。

 CLの決勝戦に赴く気になったのには、取材以外に大きな理由がある。今年度中に65歳になる私は、高齢者としてワクチン接種を優先的に受けられることになり、実際ワクチン接種のクーポンは5月初旬に届いた。

「ついに来た! これでワクチン接種を受けられる!」と歓迎しながらウェブ予約をやったが、この時点で住まいのある名古屋市は「6月末まで予約で埋まっている」。

■呼び出し音すら鳴らない…

 電話で予約しようと20回ほど掛けたが、呼び出し音すら鳴らない。たとえばカード会社のヘルプデスクなどに電話し、繋がらなくても「ただいま大変に混雑しています。繋がるまでに時間が掛かる場合もあります」といったアナウンスがある。

 呼び出し音すら鳴らないということは、受け手が圧倒的に少ないからに違いない。たとえクーポンが届いとしても、これではワクチン接種なんて「絵に描いた餅」ではないか! 

 英国の知人からの連絡によると「3月、4月頃からワクチン接種が始まった」「高齢者だけではない。50代の接種も進められており、中にはすでに2回接種した人もいる」と言う。

 英国でワクチン接種はできないものか? そんな思いが頭をフッとよぎったものだが、大きな現実問題を抱えていた。私は、日本の国民保険に相当する「NHS」(National Health Service)に登録していないのだ。

 長い英国暮らしの間、病気らしい病気にかかったことがなく、登録しないで何十年も経過してしまったのだ。

 どうやらウェブ上で登録ができるみたいだ。よし! トライしよう! そう決意し、在住証明になる運転免許証を見たところ……ナント2020年の4月に有効期限が過ぎているではないか!

 昨年3月にブラジル、英国とコロナ事情を取材した際、免許証の更新が迫っていることに気が付かず、その後のパンデミックで航空便がキャンセルとなり、英国に戻ることすらままならない状況に陥り、そのままになっていた。万事休す!

 だが、ロンドンで所属するアマチュアサッカーチームのメンバーから連絡が続々と入り、最近は「大型接種会場で予約なしでもワクチン接種が出来た」という情報を入手した。トライしてみる手はあるな……。

【5月30日】

 CL決勝の翌日、ロンドンに飛んだ。

 英国の日本からの入国制限は「入国3日以内のPCR検査の陰性証明が必要」。私は、日本を出発する5月27日にPCR検査を受け、ロンドンには3日後の5月30日に入国したわけだから、無事ロンドンに降り立った。クリアできたのだ。



【6月1日】

 翌31日は祭日だったので6月1日に大型接種会場に足を運んだ。

 建物に続くストリートで検問があり、予約済みの者でないと通過できない。私は「居住者であること」「(有効期限オーバーではあるが)免許証を見せて60歳以上であること」「昨年3月に英国を離れて親の介護のために日本に帰国。それからフライトがキャンセルになって英国に戻れなかったこと」など事情を説明し、接種会場に向かおうとするが、検問の若者は「予約がないと入れません」の一点張り。

 そこで「現在は接種年齢が<40歳以上>に広がっている。60歳以上の私がどうして受けられないのですか。接種会場の受付でダメだったら戻るから、そこまで行かせて欲しい」と懇願するとようやく許可が下りた。

 並んだ順番で5~10名ほどのグループになって小部屋に待機。そして次の小部屋に移動、そのまた次の小部屋に……というパターンを何度か繰り返し、1時間ほどで受付にたどり着いた。 

 検問での説明を繰り返すと受付担当者は、上級医療従事者を呼び出してくれた。リーダー格の彼が言うには「NHS登録を済ませないとワクチン接種を受けても、正式にワクチン接種を受けたという登録が、NHS上に記録されない可能性がある。それでもワクチンを接種しますか? 私はNHS登録を優先すべきだと思います」。その通りだろう。困った。

 今回は短期間の英国滞在。日本への帰国便も予約している。逡巡していると「ドスン」という音が響いた。音の発生源を見るとーー。男性の足が2本、ニョキッと天を向いているではないか。

 そこはワクチン接種後に「15分間の経過観察を行う場所」だった。副反応のせいか、男性は椅子に座ったまま、後ろに倒れてしまったのである。 =つづく

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