ワクチンパスポートへの期待と現実 日本でも26日から発行スタート

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 今月26日から新型コロナウイルスワクチンの接種歴を渡航先で証明する「ワクチンパスポート」(予防接種証明書)の申請受け付けが始まった。現在は5カ国でしか使用できないが、順次拡大されていく予定。外国への入国時に自主隔離やPCR検査などが免除されるなどのメリットがある。

■自治体窓口に出向けば「即日発行」

「ワクチンパスポート」は当面、ビジネスユースまたは海外旅行客に限られる。申請できるのは国内でワクチン接種した人に限られ、海外での接種は対象外。希望者は1回目の接種日に住民票があった自治体に申請することになる。

「1回目と2回目の間に引っ越しされたりした場合には、接種券を送付された自治体に手続きすることになります」(内閣府・新型コロナワクチン接種証明担当者)

 たとえば、東京都中央区に住んでいる人は、必要書類を準備し、中央区保健所健康推進課の窓口に出向くか、郵送するかを選べる。必要書類は「申請書」(区のHPからダウンロード)、「有効期限内の旅券」(パスポート)、「接種事実を確認できる書類」(接種済証または接種記録書)の3つ。窓口へ出向けば、混雑していたり、接種事実が確認できないなどよほどのことを除き、〈即日発行〉してくれるというから便利だ。しかも手数料は無料だ。その発行されたワクチン接種証明書には、ワクチンの種類、メーカー、製造番号などが日本語と英語で併記される。

「予防接種証明書はPCR陰性証明と違って、飛行機に搭乗するたびに検査する必要がなく、費用もかかりません」(浜松医療センター感染症内科の矢野邦夫医師)

 今のところイタリア、オーストリア、トルコ、ブルガリア、ポーランドの5カ国で公的な証明書として使われる。

「12月までロックダウンが延長されたイタリアでは、カフェやレストラン、イベントや商業施設などを利用する際、提示が義務付けられています。会食や打ち合わせで、施設を利用する際にワクチンパスポートがないと不便を強いられる場面はあるかもしれません。入国時も、ワクチンパスポートの提示で隔離は免除となります。事前にPCR検査などを受ける必要もなくなります」(旅行ジャーナリストの渡辺輝乃氏)

中国、タイなどアジア諸国の承認がカギ

 だが、何とも悲しいかな、このワクチンパスポート、日本人の関心はかなり薄い。

 というのも、外国を訪問する際はいいが、帰国後はワクチンパスポートを持っていても相変わらず2週間の自主隔離があるから。そもそもEU(欧州連合)は現在、日本人や日本からの渡航者の入国制限は取っておらず、ワクチン接種の有無にかかわらず入国できる。さらにEUの承認済みワクチン(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソン)を打っていれば、ワクチン接種証明書の提示で自主隔離なども免除される。現時点で渡航者が英訳されたワクチン接種済み証明書を用意しなければならないが、イタリアのように他のEU諸国も日本のワクチンパスポートをその代用として認めてくれれば、グッと普及が早まるかもしれない。

 一方、アメリカはワクチンパスポートに当たる「ワクチンカード」というものがあるが、海外との共通化や相互承認は進めておらず、外国人渡航者の扱いも州ごとにまちまち。一応、観光を重視するハワイ州はワクチンカードを持っていれば同国内からの移動に際し10日間の隔離免除をしているので、いずれ日本人のワクチンパスポートも認める可能性はある。日本の医療機関で英文のPCR陰性証明書を発行してもらうとなれば、2万~3万円は覚悟しなくてはいけない。仮定の話ではあるが、ハワイで仕事のある人や旅行者はワクチンパスポートを発行してもらっても損はないだろう。繰り返すが、手数料はタダなのだ。

 だが、このワクチンパスポートが本当の意味で使われるようになるのは、日本人の入国を著しく制限している国で承認されてからの話だろう。

 外務省によると、現在、日本人の入国制限を取っているのは、68の国と地域。豪州やカナダをはじめ、アジアでは中国、台湾、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナムなどがある。いわゆる日本企業の現地駐在が多い国々だ。爆発的に陽性者が増えているインドネシアは一時滞在許可や定住許可を保持している者以外は全ての外国人の入国を禁止中だし、豪州も永住者やその家族などを除いて全ての入国を禁止している。

「それでも、タイではこれまで日本人の入国を厳しく制限してきましたが、7月から『サンドボックス制度』(制限区域)でプーケット島限定ではありますが、ビジネス渡航に限って日本人の入国を認めるなど緩和の方向に向かっています。今後、同国のワクチン接種率が高まれば、日本のワクチンパスポートを使って旅行者も解禁されるかもしれません」(現地旅行代理店関係者)

 おおむねアジア諸国はワクチン接種が遅れているが、今後接種が加速し、一定の安全性が認められれば、外国人の入国も認めてくるはず。その時こそ日本の外務省の外交交渉力が問われてくる。

 日本のワクチンパスポートを巡っては、ワクチン接種率を高めるために国内旅行や飲食での割引特典なども議論の対象になっている。いずれにせよ、マスクを外して自由に海外へ行けるようになる日が待ち遠しくてたまらない。

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