認知機能対策にも! 50代から始める「ポケモンGO」のススメ

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 スマホゲーム「ポケモンGO」がリリースされて5年。世界中で大ブームとなり、中高年のファンも珍しくない。そんな中、84歳の熱心なファンがまとめた“攻略メモ”が話題だ。いわく、「ボケ防止に最適」。世界的人気ゲームは、中高年の頭を守ってくれるのかーー。

  ◇  ◇  ◇

 ネットの話題をさらっているのは、「これは84歳でポケモンに目覚めた祖父のメモです」と題するツイート。投稿された画像には、メモ用紙に手書きでびっしりと「ポケモンGO」の情報が書き込まれている。その枚数は10枚超。内容の詳しさ、熱量のすごさが称賛され、15.9万もの「いいね」を集め、リツイートは3万件だ。

 投稿などによると、祖父は、投稿者の叔父にあたる息子が始めたのをキッカケに、「ポケモンGO」にハマったらしい。その日は、何とリリース翌日の2016年7月23日。当時79歳。「新しいものはちょっと……」と渋りそうな年代だが、すごい前向きさだ。

「ポケモンGO」に触れておく。スマホのGPSを使って、現実にある名所や店舗をリンクさせるのが特徴だ。それらの場所を巡ると、ゲーム上で使える道具を獲得できる。その途中で出現するポケモンを捕まえ、自分で育てたり、別の仲間と交換したりして、布陣を整え、一定のレベルに達すると、自陣のポケモンを仲間のポケモンと対戦させることができる。

 くだんの男性がまとめたのは、この対戦にまつわる部分で、自陣のポケモンに有利な相手、または不利な相手などを分析。それを40種類ほど覚えておき、瞬時に判断できるように詳しく書き込んでいるらしい。昼間は自転車で出かけてポケモンを集め、自宅に戻るとキャラ分析に励む。

散歩も仕事も意思決定は前頭前野で

 定年後に家でダラダラする引きこもりとは比べるべくもない活動量で、“頭脳プレー”も取り入れている。「ボケ防止に最適」というのもうなずけるが、医学的にはどうなのか。

 作家で、聖マリアンナ医大神経内科の元准教授の米山公啓氏に聞いた。

「歩く行為は、何げない動作ですが、脳科学的には意思決定の連続です。たとえば、散歩しながら食事する店を探すとき、目の前に見えたそば屋にするか、それともそぞろ歩きでチェックするかと悩む。そこに予備知識で仕入れた情報、信号や周りの状況を加味しながら、次の行動を決めていきます。脳科学的には、ビジネスで意思決定するときも、散歩で求められるベストな決断も、同じ前頭前野の回路が使われるのです。歩くことは意思決定のトレーニングになるので、『ポケモンGO』が認知機能の維持に役立つ可能性は十分あります」

 アップルコンピュータの創業者スティーブ・ジョブズは、意思決定の際に会社の周りを歩き回っていたことが伝えられている。上場企業の役員や起業家には散歩やマラソン好きが珍しくない。ローソンの竹増貞信社長も週末などに自宅周辺を5~10キロ走る。東京マラソンも2回完走している。

■5割超が実感。家族との話題、生活に楽しみ

「しかし」と米山氏が続ける。

「80歳の人に突然、『ポケモンGO』を勧めても対応できないでしょう。認知機能対策を期待するなら、定年前の50代後半くらいから、前向きに取り組むことが大切です。年を重ねた人ほど、はやりものに手を出す方がいい」

 ネットで話題の男性は、「携帯電話が普及し始めたときも、すぐに使い始めた」そうだ。肩掛けの“弁当箱”みたいな携帯が小型化されて普及したのは1990年代後半。そのタイミングで使い始めたとすれば、定年前後だ。記者の当時のイメージでは、60代以上の携帯アレルギーはかなり強かっただけに、その点でも話題の男性は進歩的で、それが認知症対策に役立っているといえるかもしれない。

 花王が17年に発表した「ふだんのくらしと健康意識に関する調査」で「ポケモンGO」による行動や意識への影響を調べたところ、認知機能に関連しそうな部分では、50%が「家族との話題やコミュニケーションが増えた」と回答。「日々の生活に楽しみができた」は59%だ。くだんの男性のような前向きさが分かる。

テーブルゲームをしのぐ脳への複雑な刺激

 認知機能の改善については、将棋や囲碁などもいいといわれる。違いはあるのか。

「将棋や囲碁、麻雀などで先を読んだり、読書したりするのも脳には刺激になります。しかし、外出して移動すると、景色の変化で視覚が刺激されると同時に、周りの音も変わって聴覚にも信号が届く。もちろん、筋肉にも。座っているときよりはるかに多くの神経回路が使われるので、デスクワークより効果的なのです。神経回路の強化だけでなく、気分的にはリフレッシュします。それが生活の活力になるので、ダブルでいいのです」(米山氏)

 なるほど、東大大学院の渡辺和広さんは、正社員2530人(20~74歳)を対象に「ポケモンGO」とストレスの関係を調査。17年に英科学誌「サイエンティフィックリポーツ」に投稿した。

「ポケモンGO」をやったグループとやっていないグループに分けて、心理的なストレス反応を示す数値を比較した結果、やったグループは42.00点から39.86点に減少したが、やっていないグループは40.38点から40.40点と横ばいだった。統計的な解析で、「ポケモンGO」のストレス軽減効果には、有意差が認められたという。

■「出かけることの大切さに気付いた」

 今のゲームは、通信機能を使って、遠隔の仲間とバトルしたり、やりとりしたりするのが当たり前。くだんの男性も、1日に25回ほどのバトルを重ねるほか、妻と一緒にポケモン散歩に出かけることもあるそうだ。バトルでは、知り合いの仲間だけでなく特定の場所で見ず知らずの人とタッグを組んで戦うこともある。後者の仕組みが認知機能対策に効果的だという。

「知り合いとのバトルを通じたやりとりも認知機能の強化に役立つほか、見ず知らずの人とのバトルはそれそのものが新しい刺激になるのです。その一方で、家族や友人と行動すれば、日常のコミュニケーションを円滑にする効果もある。新しい刺激と日常の刺激がそれぞれ強化されるのが、認知機能のプッシュに役立つのだと思います」

 前述の花王の調査に参加した65歳の女性も、報告書にこう語っている。

「昔は外出するのも嫌いで、ほとんど家の中にいて公園に行くこともなかった。今年は友人と『ポケモンGO』をしがてら花見に10カ所は行き、自然に触れる機会が増えた。家の中にこもると行動も考えることも限られるし、ストレスの発散場所もなくなると思う。出かけることの大切さに気付いた」

 ◇  ◇  ◇

 何かを始めるのに遅いということはない。定年を間近に控えた人は、チャレンジしてみますか?

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