判定はたったの3秒! 食品添加物の量がすぐに分かる「AIアプリ」を使ってみた
リモートワークの普及もあって、手軽においしく食べられる加工食品は生活になくてはならないものとなった。その代表格はカップ麺や冷凍食品だが、これら加工食品には食品添加物が使用されているため、安全かどうか不安に思っている人は多いだろう。すぐに添加物の有無を確認できるツールがあれば便利だ。
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合成保存料などの食品添加物は「食品の保存」などの目的で使われる。古くから豆腐を作るために使われる「にがり」をはじめ、アイスクリームの「乳化剤」も食品添加物のひとつだ。
これら添加物はヒトの健康を損なう恐れがある一方で、微生物などの繁殖を抑え、食中毒のリスクを減らすことにも役立っている。例えば、ハムやソーセージに発色剤として用いられる「亜硝酸塩」は、ボツリヌス菌などの細菌の増殖を抑え、食肉製品の腐敗を防止する働きを持つ。1カ月以上経っても市販のソーセージが腐らないのはこのためだ。
この亜硝酸塩は体の中で発がん物質をつくり出すといわれてきたが、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、合同食品規格委員会(コーデックス委員会)は「関連性があるという証拠はない」と一応は否定。だが、亜硝酸塩は使用量を誤ると中毒症状を引き起こすため、使用量は厳格に守らなければいけない。
「食品添加物の安全性評価は食品安全委員会が行い、『一日摂取許容量』が設定されます。現在、食品添加物は、ソルビン酸やキシリトールなど指定添加物が472品目、クチナシ色素やタンニンなど既存添加物が357品目の計829品目があります」(消費者庁担当者)
食品の製造業者(海外も含めて)が“適切”に食品添加物を使用してさえいれば、健康への影響はないということだろう。なお、日本の添加物は829品目だが、米国はもっと厳しく約1600品目ある。
とはいえ、いくら国が安全だと言っても添加物が多量に入った食品はあまり口にしたくはない。
もっとも、これだけ添加物の数が多いと一般人には判断がつきかねないのも事実。
そこで登場したのが、AI(人工知能)が食品の健康度を判定するアプリ「フードスコア(FoodScore)」。
A~Eの5段階で判定
「アプリは無料でダウンロードすることができます。食品に付いているバーコードをスマートフォンで読み取ると、AIが原材料に含まれる添加物と症状のリスクを計算し、A~Eの5段階で判定します。普段、我々が口にしている食品がどういうものなのか、食事を見直すきっかけになればいいと思います」
こう話すのは、アプリを運営するシグナルトークの担当者。なんとも便利な世の中になったものだが、AIは消費者庁の添加物データ、FDA(食品医薬品局=米国)、FAO、WHOの安全評価、さらに約7000人の食生活と疾患の関係、また専門家の書籍や論文まで学習しており、その上で判定を出す。
判定は「健康度」の5段階と、コンマ1単位の「スコア」を表示。「A」(100~80)なら完全無添加食品、「B」(79.9~40)が添加物の少ない食品、「C」(39.9~0)が普通の食品。これ以下はマイナスの評価となり、「D」(マイナス0.1~マイナス40)が添加物が多い食品、「E」(マイナス40以下)は避けた方がいい食品となる。
■「揖保乃糸」はB
実際にアプリを使ってみると、驚くほど操作は簡単。スマホを食品のバーコードに向けると、わずか3秒ほどで「健康度」と「スコア」が出てくる。ちなみに、リモートワーク中の記者が大好きで間食としてよく食べている「ソフトサラダ」(亀田製菓)は「E」判定(マイナス85.7)。避けた方がいい食品だった。もちろん、一日摂取許容量を超えない限り直ちに健康被害はないので、フードスコアの判定はあくまで目安と考えたい。
1つの判定を見たら余計に興味がわいてきて、家中にある食品を調べてみたくなった。お昼によく食べている「マ・マー早ゆでスパゲティ」(日清製粉ウェルナ)は食品添加物が一切入っておらず、判定は「A」(89.1)。これから夏にかけて食べる機会が増える「揖保乃糸手延べそうめん」(兵庫県手延素麺協同組合)は「B」(65.4)。食品添加物は食用植物油ぐらいで、まずまず安全と言えそうだ。
反対に調べる前からある程度は覚悟ができていたが、「カップヌードル」(日清食品)、「マルちゃんQTTA」(東洋水産)はともにマイナス500を超えて判定は「E」。おいしいものほどなぜか判定は厳しい。
意外だったのは、健康のために食べている「国産丸大豆納豆」(タカノフーズ)が「E」(マイナス247.3)だったこと。納豆自体はまったく問題ないが、「たれ」の部分で評価を下げた。また、集中力のためによく噛んでいる「クロレッツXP」も「E」(マイナス503.9)。原材料のひとつ、キシリトールという糖アルコールには虫歯の予防効果が認められるが、人によってはお腹がゆるくなることもある。
砂糖の代わりに使って「ノンシュガー」「低カロリー」という商品も多く、やはり取り過ぎは禁物だ。
消費者庁は「無添加表示」を厳格化
さらに気になったのは「無添加」をうたっている食品。「無添加 家傳山吹味噌」(信州味噌)のように完璧な「A」(88.8)もあるが、中には無添加と言いながら「E」の食品もゾロゾロ。「化学調味料無添加」「塩分無添加」といった紛らわしいものもある。
そこで先月、消費者庁が食品添加物の不使用表示に関するガイドラインを改正し、商品包装に「無添加」「不使用」と記載するルールを厳格化(2年間は経過措置)したので、今後は減ってくるだろう。
「無添加は健康で安全というイメージが独り歩きすると、逆に添加物が入った食品は危険と疑われかねません。国としては一日摂取許容量を設定し、その値を超えなければ毎日摂取し続けたとしても、健康への悪影響はないと推定しております」(消費者庁担当者)
確かにそうだろうが、花粉症や睡眠障害など食生活と健康の関連性は未知数の部分が多いため、「健康によいものを食べる」に越したことはない。「フードスコア」のようなアプリをうまく使いこなすのはどうだろうか。