「業務委託」で社員を搾る会社の狡猾手口 QBハウスは一部契約に記載不備あり

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 好調の裏で社内には不満が渦巻いているのか。10分カットで知られるQBハウスを運営するQBネットHDは、売上高が昨年4月から12カ月連続で前年同月比プラスを記録。3月は既存店ベースで同6.5%増と、0.3%増だった2月を大きく上回る。上げ潮ムードが続くが、理容師を巡る脱法的な労働契約も問題になっている。

  ◇  ◇  ◇

 契約を巡る顛末を振り返ってみよう。QB本社の求人を見て応募した理容師は、エリアマネジャーの面接を受けて採用。受け取った「QBスタッフ採用書」という書類には、賃金や就労場所などの労働条件が記されていたが、雇用主の名前や連絡先などは記載されていなかったという。

 配属された店で働き始めると、給与明細に記された会社名は、「QBハウス」。違和感なく仕事を続けていたが、ローン手続きで会社の証明書が必要になり、会社に問い合わせると、実は雇用主がQB本社ではなく、面接したエリアマネジャーだったことが明らかになったという。

 QBハウスには、本社直轄の店舗と業務委託契約を結んだ店舗がある。問題が発覚したのは、業務委託契約店舗だ。求人に応募したスタッフは、QB本社との雇用関係はなく、業務委託契約店舗のエリアマネジャーとの不思議な雇用契約だったわけだ。

雇用契約書の未締結は2割

 QBハウスだけでなく、居酒屋やコンビニなど多くの業界で、本社と業務委託契約を結ぶフランチャイズ制が導入されていて、フランチャイズの加盟店は従業員を雇う。今回のケースは、何が問題なのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏に聞いた。

「一般的なフランチャイズ制なら、従業員は法人企業である加盟店と雇用契約を締結。加盟店は、従業員の労務管理や保険加入などの雇用責任に伴う義務を担う代わりに、従業員に指揮命令する権利を有します。これは合法です。しかし、QBハウスのケースは、雇用責任を免れる狡猾な手口で、労働基準法や労働契約法に違反する可能性があります」

 どういうことか。

「このケースの問題点は、『本社との雇用契約に見せかけた業務委託契約』だったことです。本来、業務委託契約は、使用者と労働者という主従関係がありません。独立した事業者間の契約です。受注者は、労働契約上の労働者ではないため、発注者の指揮命令を受けず、自由に業務を遂行できる代わりに、労働基準法や労働契約法の保護(残業代の支払いや解雇権の乱用防止など)を受けることができません。QBハウス側は、この仕組みを悪用し、受注者を実質的に指揮命令下に置いて仕事を請け負わせておきながら、雇用責任は負わないという会社のメリットだけを得ようとしたとみられるのです」

 声を上げたスタッフらは、福利厚生がなく、社会保険に未加入で、有給休暇が取れず、未払い残業代があるという。さらにコロナ感染拡大に伴う閉店や営業時間短縮のほか、クレームに対応する個別指導などもQB本社が担っていたとされる。エリアマネジャーは使用者としての業務を行っていないことから、スタッフがQB本社の指揮命令下にあり、本社との労働契約を主張するのも当然だろう。

 この事態を受けてQBハウスは、業務委託先の雇用契約に関する実態調査を実施。在籍する570人を対象に423人から回答があった。

 それによると、採用・面接時に「業務受託者が雇用主であるとの説明を受けた」は156人で、正しい説明は約37%にとどまる。「説明を受けていない」は101人と4人に1人で、「QB本社が雇用主」とする虚偽の説明をされたのは8人だった。

 調査時の認識については、「雇用主が業務受託者」が9割超の384人に上るのは、ギャップを埋める説明があったのだろうか。雇用契約書の締結についても、「している」は209人と半数に満たず、不備や未締結が106人と2割近い。調査では、今回問題になった「スタッフ採用書」や給与明細書の「QBハウス」記載も認めている。

 この結果を受け、QB側は不備がある契約については再度雇用条件などを説明した上で、改めて雇用契約書を交わし、面接などでの改善策の徹底を打ち出している。

不要な研修費の請求、年金にも影響が

 しかし、形式的に業務委託契約でありながら、実質は労働契約でトラブルになるケースは後を絶たないという。

「全国展開するリラクセーションサロンや全国規模の英会話スクールなどでも、業務委託契約での労働者性が問題になり、裁判になることは珍しくありません。中小企業だとさらに広がっていて、職種を列挙すると、トラック運転手、システムエンジニア、清掃員、建設作業員、保険勧誘員、ホステス、映画撮影技師など幅広い。業務委託契約は要注意です」

 QBスタッフはローン契約での会社確認をきっかけに、ずさんな雇用契約に気づいたが、知らずに放置すると大変だ。

「不払いについては、残業代のほか深夜手当、休日出勤手当に及ぶ恐れがあります。社会保険に未加入だと、自分で国民健康保険・国民年金に加入することになり、年金などにも影響するのです。また、労災事故や労働問題が発生しても、『委託先の問題』として、会社が責任逃れをするリスクもあるでしょう」

 正規雇用なら、研修費用は会社負担。業務委託を悪用されると、その費用も請求されかねないという。

「リラクセーションサロンでは、業務委託スタッフに有料で研修を複数回受けさせ、その収入もビジネスにしていました」

■労務管理の状況を証明する3要件

 会社が業務委託するメリットは、高いスキルを持った人材を即戦力として活用できること。さらに正社員として採用した場合に発生する備品代や設備代のほか、社会保険料なども抑えられる。それは、その人材に相応の報酬で報いてこそで、報酬も払わず会社のメリットだけ享受するような契約は、すぐに改められるべきだ。不利を受けた人は、どう対処すべきか。

「まず労働基準監督署に申告して、会社への指導を求めること。それでも改善しなければ、労働組合に依頼することです」

 QBのスタッフも個人加盟の労働組合に加入して事態の打開を図っている。その場合、重要なのが、「正社員と同等の労務管理がなされていたか」の証明だ。

「主な条件は、①勤務時間や場所の指定②業務の遂行方法やプロセスなどの命令③発注元との専従の強制の3つです。これらがあれば、業務委託契約でも、受託者の労働契約が認められます」

 さらに「欠勤時の賃金控除」「就業規律の適用」「予定外の業務」などがあれば、委託企業の受託者は「事実上の労働契約」と見なされる。泣き寝入りしてはダメだ。

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