精神科医・和田秀樹さん 「医療をテーマに撮りたい映画がいくつかあります」
和田秀樹さん(精神科医/62歳)
新書「80歳の壁」が50万部のベストセラーとなっている精神科医の和田秀樹さんは、高齢者は好きなことをやっていいと言う。自身の死ぬまでにやりたいことは医療界をテーマにした映画の製作。数々の映画を作ってきた思いと、高齢者の生き方から高齢者をターゲットにしたビジネスまでを語っていただいた。
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■心疾患が死因トップの欧米のデータを押し付ける愚
──医学的な話ですが「高齢になったら血圧とコレステロール値を下げる」と勧められる健康の常識の中、和田先生はそうではないとおっしゃっています。
血圧でいうと、下げた人と下げていない人との長期的な比較調査をしていないのに、外国のデータなどを基に押しつけるわけです。そもそも欧米のほとんどの死因トップは心疾患で、日本はがんで死ぬ人が心筋梗塞の12倍もいる。大きく違うんです。それに、どんなに節制しても高齢になれば動脈硬化にはなっているのだから、そこで無理に血圧を下げるとフラフラするのは当たり前。お年寄りを診ている経験から言って、年とともに血圧が上がるのは適応現象ではないかと思います。
──コレステロール値でも米国の肥満と比べ、日本人はそこまで太ってないのでは。
米国の人は1日の平均摂取カロリーが約3000キロカロリー。日本人は1900キロカロリーで北朝鮮の一歩手前なんですよ。それでもまだ食事を減らせと言うのは頭がおかしい。日本の医者は勉強はできても考えない人が多いのかな。
──和田先生は、高齢者も食べたいものは我慢せず食べていいというお考えですね?
心筋梗塞で死ぬ人が多い国であれば我慢するのも価値があるとは思いますが、日本はがんで死ぬ国。我慢ばかりすると免疫が落ちちゃいますので、好きなことをやり、好きなものを食べた方が免疫が活性化されてがんになりにくい。免疫力が高ければ運よく軽いがんで済んだり、進行が遅れることもある。コロナも同じで、自粛で動かず、ふさぎこんで暮らして免疫力が落ちたらいけません。自然治癒力を無視するのはおかしな話なんです。
──「好きなこと」というと、和田先生は2000年代から映画を撮っています。
17歳の頃、将来やりたいこともなく、アイデンティティークライシスみたいなものを起こしていて、「仮に東大に行けて学歴をつけたとしても、どうなんだろう」と悩んでいたんです。そんな時、藤田敏八という東大出の監督の「赤い鳥逃げた?」(1973年、原田芳雄主演)を見て、「映画監督は熱い思いがあればできる仕事だ!」と思ってしまい、自分も撮りたいと。でも当時、日活が助監督試験をやめてしまい、映画会社の社員監督への道がなくて。低予算映画がはやっていましたから、僕は映画の勉強をするより、資金をつくる方が映画作りの道だと考えたんです。それで効率的に稼ぐ手段として医者を目指しました。