和田秀樹
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和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

認知症もがんも「食事制限」で進行する…過度の粗食より好きなものを食べよう

公開日: 更新日:

 40代以上になると、特定健診が行われます。いわゆるメタボ健診で、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を早期に見つけ、異常がある人には保健師や管理栄養士などによる保健指導が行われ、生活習慣病を改善し、ひいては心筋梗塞や脳卒中などを予防することが狙いといわれています。

 効果ナシとはいいませんが、私から言わせるとナンセンスです。特に認知症の予防という点で、中高年が食事改善を過度にやるのは、決してお勧めできません。

 行き過ぎた食事改善は低栄養、低カロリーを意味します。その結果、失われるのがタンパク質やビタミン、ミネラル、コレステロールなどです。そうすると、代謝が悪くなって老化が早まるばかり、エネルギー源のブドウ糖をうまく活用できなくなり、脂肪が蓄積されます。つまり、食べていないのに太るのです。太るから、さらに食事を制限すると……。

 皆さん驚くかもしれませんが、60歳以上は5人に1人がタンパク質不足などによる新型栄養失調といわれます。過度な生活改善の影響であることは間違いありません。

 粗食はストレスを生んで、認知症予防ではマイナスです。さらに免疫機能にも悪影響を与えるため、がんや感染症の予防にもよくありません。日本の死因トップは、がんが圧倒的ですから、がん対策でも食事を制限し過ぎるのは、お勧めできないのです。

 では、認知症を予防するにはどうするか。ここまで読んだ方は、お分かりでしょう。そう、食事制限をゆるくして、もっと食べたいものを食べること。特に肉をもっと積極的に食べるとよいでしょう。

 野菜が健康によいという“野菜信者”が行きつく先が、ベジタリアンやビーガン(卵や乳製品も食べない完全菜食主義者)ですが、ベジタリアンやビーガンは短命であるといわれています。豆などでは十分なタンパク質を補えないのでしょう。

 なぜ魚より肉かというと、適度なコレステロールを摂取するには肉なのです。脳の神経伝達を維持するには、コレステロールが欠かせません。効率的なコレステロールの摂取には、魚より肉がベターなのです。

 好きなもの、特に肉をガマンせず食べると、脳の機能維持に役立つことがお分かりいただけたでしょう。その快感が免疫力にもプラスに働くため、がん予防にもなります。食事制限を見直し、好きなものを食べることで、認知症もがんも避けられるのです。



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