田中幾太郎
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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

慶応女子高の偏差値さらに上昇の気配…背景に芦田愛菜のイメージと東京都の高校無償化

公開日: 更新日:

 小池百合子都知事による高校授業料の全面無償化の決定で来年度の受験戦線が大きく変わりそうだ。「都立高の難易度が下がり、相対的に私立のハードルが上がる」と話すのは大手学習塾の幹部。

「トップクラスの有名私立高がさらに難しくなるのは必至。中でも偏差値が跳ね上がりそうなのが慶応義塾女子高校です」

 小学校から高校まで慶応の付属校は幼稚舎や塾高など全部で9校。その中で唯一の女子校がこの慶応女子高である。人気の理由として「無償化以外に女子校の復権が挙げられる」という。

 近年、低落傾向にあった女子校の共学化がトレンドになっていた。渋谷女子→渋谷教育学園渋谷、東横学園→東京都市大学等々力、順心女子学園→広尾学園、戸板女子→三田国際学園……。今年は東京女子学園が共学化し、芝国際に改称した。

「女子校が減る中で、逆に別学の良さが見直されてきた。共学ではジェンダーバイアス(性差への偏見)が起こりやすいというデータもある。女子校のほうが女性の自律につながる教育法を取り入れやすい」と学習塾幹部は長所を強調。

「そのトップに君臨するのが慶応女子高」だという。これには異論もありそう。名門女子校は慶応だけではないからだ。

 しかし、高校入試を実施している女子校は非常に少なくなっている。御三家(桜蔭、女子学院、雙葉)は完全中高一貫校。躍進目覚ましい豊島岡女子学園も22年度から高校募集を停止した。

 高校から入れる名門として希少価値も高まっている慶応女子高だが、何より魅力はやはり慶大への内部進学が約束されている点。「女子校にありがちな細かい校則もほとんどなかった」と振り返るのは30代のOGだ。

「とにかく自由な雰囲気を満喫できた。大学受験がないので部活動に打ち込む生徒が多く、その成果を文化祭の“十月祭”で出す。この時の仲間とは今も交流があります」

一般入試による募集は70人の狭き門

 今回の高校無償化によってさらに人気が高まりそうな慶応女子高。もうひとつ、ブランド力を上げる原動力となったのが今春、慶大法学部に進学した女優の芦田愛菜の存在だ。区立小学校から中学受験で慶応中等部に入学。慶応女子高に内部進学した。

「聡明なイメージの強い芦田さんが在学していたのは大きなアドバンテージ。自分も慶応女子高を目指したいという受験生が増えている」(前出の学習塾幹部)

 最大の難点はあまりに狭き門であること。生徒数は1学年200人前後で、そのうち半分が中等部からの内部進学だ。残りの100人のうち30人が推薦枠。一般入試による募集は70人に過ぎない。

 科目は英数国に加え作文。与えられたテーマに沿って60分で600字にまとめる。23年度は「科学的なものとそうでないものを判断する基準とは」がテーマだった。「自由度が大きく、いかにも慶応らしい問題が出される」(前出の学習塾幹部)のが特徴だ。入試は来年2月10日に行われる。



◆田中幾太郎の著書「名門校の真実」」(1540円)日刊現代から好評発売中!

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