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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

慶応内の普通じゃない系列中学校の序列 伝統ある「普通部」を「中等部」が逆転しつつある納得の理由

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「ジェンダーフリーの観点からいえば、慶応はかなり遅れていた」と話すのは80代の慶応大元教授。小学校から大学院、そして研究者としてずっと慶応ですごしてきた。その歴史にもくわしい。

「慶応ボーイという言い方はあっても、慶応ガールはほとんど使われないように、元々は男子校なんです」と語る元教授自身、幼稚舎→普通部→塾高と高校まですべて男子校だった。

 幼稚舎が女子生徒を取り始めたのはこの元教授が卒業する後の1948年から。1学年の定員は男子96人・女子48人と2対1の割合となっている。戦後に開校した中等部も男女比は2対1だ。中等部の女子生徒の受け入れ先として慶応義塾女子高が併設された。92年に開校した慶応唯一の中高一貫校の湘南藤沢は男女比1対1だが、開校した経緯を知る60代の慶応大文系教授は異例中の異例と話す。

「慶応が湘南藤沢をつくった背景には、これからは中高一貫の共学校のニーズが高まるという理事会の判断があった。いわば、経営上の側面が強かった。あくまでも慶応の本流は男子校であり、その中心は普通部なんです」

 慶応にとって普通部は単なる中学ではなく、源流なのだ。普通部の創設は1898年とされているが、その大本は福沢諭吉が江戸末期に始めた蘭学塾であり、慶応内の最古の学校だ。その後、大学をつくる際に、それと区別するために普通部と称するようになった。そして戦後の学制改革で、普通部の高校課程にあたる部分を分離する形で塾高が誕生した。

「幼稚舎の男子は普通部、中等部、湘南藤沢の3校の中から内部進学先を選ぶことができます。湘南藤沢はアクセスの問題もあり毎年数人しかおらず、ゼロの年もある。1番人気はやはり伝統がある普通部ですが、最近少し異変が起きています」と話すのは幼稚舎関係者。かつて幼稚舎の男子のほとんどが普通部に内部進学した。ところが2010年以降は男子96人中10人台後半~20人台前半が中等部を選択。21年以降は3年連続で中等部に進む男子が30人台を記録した。普通部を選ぶ生徒が減っているのだ。

 夏の甲子園で優勝を果たした塾高野球部でも変化が見られる。少し前まで付属の中学から上がってくる選手は普通部出身が圧倒的に多かった。優勝メンバーの一人で清原和博氏の次男・勝児選手は前出の元教授と同じ幼稚舎、普通部から塾高に進んだ本流コース。だが、現在の野球部は普通部出身が5人に対し、中等部は7人と上回っている。

「男子受験者に限れば、かつては普通部が偏差値は上でしたが、最近は共学人気もあってほんのわずか、中等部が逆転している」(学習塾進路担当)

 普通部は2月1日、中等部は同3日と入試日が異なり、併願が可能。両校に合格した場合、どちらに入学するのか、難しい選択が待っている。いずれにしても慶応大までの内部進学が約束され、はた目から見ればゼイタクな悩みである。



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