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沢野ひとしイラストレーター・エッセイスト・絵本作家

イラストレーター、エッセイスト、絵本作家。1944年、愛知県生まれ。児童書出版社勤務を経て、書評誌「本の雑誌」創刊時の76年から表紙と本文イラストを担当。第22回講談社出版文化賞さしえ賞受賞。著書に「ジジイの片づけ」「人生のことはすべて山に学んだ」ほか多数。

生きることは旅すること 美空ひばり「川の流れのように」を聞くと病床の母を思い出す

公開日: 更新日:

数寄屋橋周辺には都電、そして川

 元気だった頃の母は、仕立ての婦人服の店を開いていたが、既製服に押され苦労の連続であった。

 母の若い頃の面影は実は美空ひばりとよく似ていた。顔が似ると声まで似るものだ。台所で小さな声で「リンゴ追分」を口ずさんでいることがよくあった。

「川の流れのように」を聞くと高校生の頃に母が築地のがんセンターに入院していた頃がよみがえる。

 思い出の銀座は64年に開催されるオリンピックまで怒涛の勢いで、どこもかしこも工事だらけであった。銀座周辺の水路、河川は蓋をされ首都高速道路に変わった。

 母を見舞いに行った帰りは決まって、ヤマハ楽器や山野楽器店をじっくりのぞき、有楽町駅まで歩いていた。日劇ホール辺りの数寄屋橋周辺には、まだ確かゆらゆらと川が流れ、都電が走っていた。

 生きることは旅すること──。思い返せば美空ひばりの最後の歌は昭和に別れを告げた曲であり、自分自身の別れも予感した歌でもあった。

 作詞・秋元康、作曲・見岳章のコンビのこの曲は昭和、平成、令和を超えても色あせない名曲である。

 美空ひばりは晩年、お酒を浴びるように飲んでいたという。アルコール依存症から脱け出すことができずに死が早まった。

【連載】沢野ひとし「ラ・ラ・ラプソディー in 昭和」

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