3.11東日本大震災から13年…被災地を蝕む「遅発性PTSD」と医療現場の今

公開日: 更新日:

年月を経て発症する「遅発性PTSD」

 ──精神科医の蟻塚院長は那覇市の病院に勤務していた2010年、うつ病や不眠症と診断された高齢者の症状は凄惨を極めた沖縄戦の体験に起因すると発見。年月を経て発症する「遅発性PTSD」と呼ぶようになりました。

 13年から院長を務める蟻塚さんは1日50人ほど診察。ここ数年で特に多いのが、震災や原発事故によるPTSDの症状を訴える患者です。沖縄同様、福島でも住民が長期にわたりPTSDを発症する可能性を指摘しています。震災後に医療従事者らが設立したケアセンターにはDV、アルコール依存、睡眠障害、自傷行為、ひきこもりなど、さまざまな相談が日々寄せられている。福島では若者の自殺率が上昇し、児童虐待も増加しています。

 ──コロナ禍の20年秋から3年半ほど取材された。

 震災によって社会が抱える普遍的な問題に切れ目が入り、覆い隠されていたものがあらわになっている。つくづくそう感じました。社会問題が可視化された最先端の地域が被災地なのではないかと。

 ──題名にパンチがあります。

 安易な希望は描きたくないのですが、取材を通じて人間の底力を垣間見た気がしました。自分の力が及ばないものに翻弄されて打ちひしがれても、誰かとつながることで自分の存在や人生を肯定して暮らしていくことができる。「生きろ」は押しつけがましい印象を持たれるかも知れませんが、人間賛歌の気持ちを込めました。

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