(27)大女優と“夢の競演”も…携帯電話で話す乗客にはしばしば驚かされる
5年ほど前のことだ。
「おい、聞いてんのか!」
突然のお客の怒声に驚き「は、はい、なんでしょうか」と返した。すると「運転手さん、ごめんね。電話してるから」と携帯電話を耳元から離してお客が丁重にわびてくる。怒りの矛先は電話の向こうの人物だ。
乗せたときから「もしかして、しかるべき筋の人か?」と感じていただけにホッとひと安心だ。だが、怒声は続く。「だからな、罪状認否で……」という言葉が聞こえてきた段階から、話の内容は頭に入ってこなくなった。心臓はバクバク。粗相はしてはならない、一刻も早く目的地に到着したいと切に願った。自分なのか、親分なのか、それとも子分なのかはわからないし、刑事事件か民事事件か定かではないが、要は裁判の話をしているのだ。実際のところ、そのお客は私に対しては極めて紳士的に振る舞ってくれたが、降ろしてから冷や汗が出た。
誰もが携帯電話を持つようになってから、お客の携帯電話での言葉を一瞬自分に向けられたものと勘違いしてしまうケースが増えた。「運転手さん、ちょっと電話します」とひと言断ってから電話をかけるお客もいるが、そうではない電話にはしばしば驚かされる。
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