奈良の鹿愛護会が語った現場のリアル…「シカさんをいじめるな!」の裏に横たわっている大問題

公開日: 更新日:

「外国人観光客が奈良のシカを足で蹴り上げ、殴って怖がらせる人がいる」。自民党高市早苗総裁の発言をきっかけに、ネット上で「シカさんをいじめるな!」との声が噴出し、大きな議論を巻き起こした。

 テレビ局が「暴力の実態は確認できない」と報じると、今度は「やらせではないか」と炎上。情報は錯綜し、真偽不明のまま感情的な意見が飛び交っている。人と鹿が共存する古都のシンボル、奈良公園で今、何が起きているのか。

 長年にわたり現場で鹿の保護活動を続ける、「一般財団法人 奈良の鹿愛護会」の中西康博副会長に実態を聞いた。

  ◇  ◇  ◇

 ──高市氏らの発言を機に、外国人観光客による鹿への暴力行為が問題視されています。現場では実際にそうしたことは起きているのですか。

「我々、奈良の鹿愛護会には、『鹿が暴行されている』といった現場からの通報や報告はこれまで一件も上がってきていません。もちろん、我々自身も常時パトロールをしていますが、鹿の腹を蹴り上げるような悪質な暴行を現認したこともありません」

 ──SNSなどでは情報が錯綜し、過激な意見も見られます。また、実際の動画なども出回っています。

「テレビのインタビューで『暴力は見たことがない』と答えた地元の方が、ネット上で『やらせだ』などと個人情報を晒されて攻撃されるといった事態も起きています。我々も『見ていない』と言うと、何かを隠しているかのように言われることもありますが、嘘をついているわけでは決してない。あくまで『団体として暴行の通報は入ってきておらず、職員も現認していない』という事実を述べているだけです。

 1日何万人もの人が訪れるのだから、これまでに許しがたい行為が起きているであろうことは否定できません。しかし、日常的に頻発しているわけではないと思います。もちろん、そのような行為があれば、奈良の鹿は国の天然記念物ですから、文化財保護法違反として警察に通報する体制は整っています」

 ──「暴力」の定義も人によって様々だと、地元の方々への聞き込みをしていて感じました。

「そうだと思います。例えば、シカは鹿せんべいを持った人間に群がりますが、当たり前のように手や荷物をかじります。これがけっこう痛いんですよ。反射的に払いのけたり、お子さんを守ろうとして手で払う場面はよく見ます。たしかにその瞬間だけを見れば鹿に手を上げているように見えるかもしれませんが、それは身を守るための自然な反応であり、仕方のないことだと我々は考えています」

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  2. 2

    マエケンの「DeNA入り」が急浮上! 古巣広島まさかのNO、巨人はマー君が足かせで動けず

  3. 3

    DeNA次期監督候補に谷繁元信氏が浮上…南場智子オーナーのイチオシ、本人も願ったりかなったり

  4. 4

    サッカー界で囁かれる森保J・長友佑都の“お役御免”と大物選手の代表復帰

  5. 5

    参政党の党勢拡大に早くも陰り…「聖地」加賀市で“親密”現職市長が惨敗落選の波乱

  1. 6

    公明党が「自民との連立離脱も辞さず」の背景…まさかの“国政撤退”もあり得る深刻事情

  2. 7

    巨人が楽天・辰己涼介の国内FA争奪戦に参戦へ…年齢、実績的にもお買い得

  3. 8

    ドジャースの“朗希タンパリング疑惑”で大迷惑!米29球団&日本プロ球団こぞって怒り心頭の納得理由

  4. 9

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  5. 10

    草間リチャード敬太容疑者が逮捕…コンビニバイトと掛け持ちの苦労人だったが横山裕のセレクトに難あり?