高市早苗発言で“炎上”…奈良公園を歩いて聞いて、そして見えた「シカと人の意外な関係」
「シカさんをいじめるな」──。そんな声がネット上で飛び交っている。発端は、自民党総裁選の立会演説会が行われた9月22日、高市早苗氏の「外国人観光客が奈良のシカを足で蹴り上げ、殴って怖がらせる人がいる」という発言だった。日本テレビが現地取材をもとに「暴力の実態は確認できない」と報じるや、一部で「やらせ報道ではないか」と大炎上。真偽や報道姿勢をめぐって議論が渦巻いている。現場はどうなっているのか。日刊ゲンダイの記者が奈良公園を歩いた。
■「ウワサは耳にするが、見たことはない」
10月上旬、平日の奈良公園は観光客でごった返していた。東大寺の大仏周辺では修学旅行の小中学生も見かけるが、圧倒的に多いのは外国人。アジア系とヨーロッパ系の旅行者は肌感覚で半々だ。
仮に「悪さをする人」が一定数いるとしても、母数の多さを考えれば、外国人がやり玉に挙げられるのも無理はない、そう感じた。
とはいえ、これだけ人の目がある中で、シカに平然と危害を加えられる人がどれほどいるのだろう。実際に見た人はいるのか。散歩中の地元の女性に尋ねた。
「ここを20年くらい散歩コースにしているけど、シカに攻撃的な外国人は見たことないんだけどねぇ。高市さんは何を言っているんだって思いましたよ。それより怖いのはマダニ。1回刺されたことがあって、お医者さんに『ここでの散歩は禁止』って言われているんです。でも、のどかで気に入っているから、今日もつい(笑)」
シカ煎餅を売る店員も口をそろえる。
「迷惑外国人のウワサは耳にしますが、見たことはありません。しつこいシカから子供を守ろうと、手で払いのける場面はよくありますけど」
ところが──。「特に昨秋ごろは何度も暴力行為を見ました」と言うのは人力車を引く男性だ。
「蹴り上げるとかではなく、手で『来るな!』って感じで振り払うとか……。シカは神聖な存在なので、それも僕は良くないと思っています」
その後も聞き込みを続けたが、高市氏が挙げた「蹴り上げ」「殴る」といった行為を目撃した人は見当たらなかった。