(12)好きな酒肴 その1
年に数度、季節ごとに行く店が、私にもいくつかある。そのうちの一軒は老主人がひとりで切り盛りするおでん屋だが、おでん以外の肴もうまい。真冬の今訪ねるなら、総菜の盛り合わせで瓶ビールから始めたい。ゴボウ、ニンジン、サトイモ、クワイなどの煮つけは、味の含ませ方もすばらしく、同じ皿に、菜の花や白子、牡蠣なども盛られて実に贅沢。マグロやスミイカなど、絶品の刺身も捨てがたい。
燗酒は、鉄の鍋に張った湯でつけてくれる。店の一押しは「白鷹」上撰だ。一合、二合と飲み進めながら総菜や魚介を楽しみ、さて、いよいよおでんである。30種以上ものタネの中から、迷わず選ぶのは白子とエビ巻き。そこにシイタケ、海老芋、セリを加えるとぐっと季節感が出た。
出汁は穏やかな薄味で、この汁をつまみに酒が飲めるくらいにやさしく、味わい深い。白子が口の中で溶け、セリを噛めば少しばかりの苦みが爽快だ。才巻を魚のすり身で巻いたエビ巻きは、行けば必ず頼みたい私の好物である。酒は3本、いや、小さめの徳利だから4本くらいは飲む。日ごろウイスキーを飲む機会の多い私だが、この店で飲むときは日本酒しか考えられない。それもフルーツを思わせる香り華やかな純米酒より、アルコール添加してきりっと仕上げた本醸造クラスが、とてもうまいと思う。


















