著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。

(21)住宅街にある名酒場

公開日: 更新日:

 阪急神戸線の夙川駅から支線に乗り換えてひと駅目は、苦楽園口という駅だ。界隈は盛り場というより住宅街。欧風の2階建ての建物の2階に「BAR THE TIME」というバーがある。マスターの宇座忠男さんの前で酒を飲んだのは一昨年のことだった。

 阪急の苦楽園口から徒歩数分の一軒のバーに闖入した私は、異物にならぬように、などと考える暇もなく、宇座マスターの笑顔と美しい手技に抱き込まれていた。

 ジンフィズではじめ、宇座さん考案の、『白鷹』をベースにしたオリジナルモヒート、ウォッカマティーニ、サントリー角の復刻版のハイボールなど、次々に飲むうち、当時、ちょうど還暦だった私は夢み心地になった。20歳年上の宇座マスターに、目の前で仕事をしていただいていることに、のぼせたのである。今の東京にはいないバーテンダーだと思った。

 たいへん残念なことに、その年の暮れをもって店を閉じるという話を聞いた。そして、何か月か経った後で、たいへん幸せなことに、店が再開すると聞いた。

 神戸の「サヴォイオマージュ」のマスター、森崎和哉さんが店を継承したのだ。それ以来、宇座さんは週に2回、森崎さんと一緒にカウンターに入っているという。

 ずいぶんバーを巡ってきたが、宇座さんほどきれいなバーテンダーは、あまり知らない。そして、森崎さんほど愉快なバーテンダーも他に知らない。おふたりとも、日本を代表するバーテンダーだ。

 苦楽園口の店は、桜が美しい夙川沿いに建っている。

【連載】大竹聡 大酒の一滴

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