著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。

(22)ウイスキー造りの夢

公開日: 更新日:

 小規模の蒸溜所で造られるクラフトウイスキーが人気を集めている。蒸溜所は現在、日本各地に100以上もあるというが、その先頭を走るのは、埼玉県秩父にあるベンチャーウイスキー秩父蒸溜所だと思う。主力ブランドはイチローズモルト。日ごろ、バーに出入りする人なら名前を聞いたことがあるだろう。

 同社の設立は2004年。創業者は肥土伊知郎氏だ。実家は造り酒屋で、肥土氏はサントリーに勤務した後、経営難だった父の会社に参加したが、会社は人手に渡ることになった。そのとき、肥土さんの父が、日本酒や焼酎の製造の傍らで造っていたウイスキーの原酒が残された。肥土氏は、この原酒を受け継ぐことが自分の使命だと思った。

 父が残したウイスキーの原酒をブレンドして商品化し、ウイスキーの製造業者として産声をあげたのが2004年のことで、2007年には埼玉県秩父に蒸溜所を完成させた。そして2008年、最初の原酒が樽に詰められた。

 その年、私は取材で現場に入って、小さな蒸溜所で造られた透明な原酒を見た。

「この酒が、30年ものになるのを見届けたいですね」

 肥土さんと私は、同世代。当時、私が45歳、肥土さんは43歳だったと記憶する。このとき滴った最初の一滴が、樽の中で眠り、熟成していき、12年以上の熟成期間を経たものだけをブレンドすると、12年もののシングルモルトができあがる。単一の樽から瓶詰する場合は、シングルカスクと呼ぶことになる。私が言った30年ものとは、この熟成期間において30年を経た原酒を意味する。つまり、私が75歳、肥土さんが73歳になってはじめて口にすることができるわけだ。

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