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中川淳一郎編集者・PRプランナー

1973年生まれの編集者・PRプランナー。多数のウェブメディアの記事にかかわる。日刊ゲンダイ「週末オススメ本ミシュラン」担当。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『それってホントに「勝ち組」ですか?』など。

52歳の筆者もやってみて分かった アルバイトが定年後の楽しさに結びつく本当の意味

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ネットに広がる「酒を飲めない客は迷惑だ」問題の背景も見えてきた

 バイト生活と並行するように昨今ネットで話題となったのが、「アルコールを飲まない人が居酒屋に行くのは店にとって迷惑だ」という議論である。「酒飲まない人は入店しないでください」と積極的に入店を拒否する店もあるが、表向きは拒否せずに飲めない客を入店させながら、嫌がる店もある。当然、飲めない客は恐縮する。そんな議論も、飲食店でのバイト経験によって、その背景がよりよく分かるようになった。

 ネットでは飲めない人を擁護する意見が数多く並んだ。その理由は「飲めない人だって立派なお客」といった感情的なものだが、飲食店でバイトしているからこそ見えてくる経済的な話もある。なぜ一部の居酒屋は酒を飲めない客を受け入れるのか。それは、一般的な大衆的居酒屋なら、ソフトドリンクの原価率が低いため、利益は増えるためである。

 私がバイトする店では、アルコール類の場合、生ビールの原価率は7割程度で、ハイボールの原価率は3割ほど。一方、ソフトドリンクはというと、コーヒーは5割ほど、コーラは3割程度、紅茶は2割程度といった具合だ。生ビールが突出して高いこのだが、ウーロン茶はどうだろうか?

 業務用で2リットルのウーロン茶をペットボトルで仕入れ、氷を250cc用のグラスに氷と一緒に入れて300円で提供する。そうすると、氷の価格を除くと原価は10円ほどに下がり、売上に対する原価率は3~4%ほどだ。こうした店側の事情が分かると、ネット上にあふれる「酒を飲まない客は迷惑だ」といった投稿が暴論だと分かる。何ごとも経験しないと背景は分からないのに、自分の無知を棚に上げて暴論に乗っかるのは大人としてほめられた行動ではない。そんなことも、バイト経験でよく分かった。

■69歳で亡くなった知人は大工とライブハウスオーナーの「二刀流」だった

 バイトのありがたみが分かって来たとき、知り合いのライブハウスオーナーが69歳で亡くなった。その人の本職は実は大工で、通夜や告別式の会場には彼の会社の従業員も含め多くの建設業界関係者とともにライブハウス関係者が参列していた。本来は交わらぬこの2つの業種の人は、「二刀流」の彼のお陰で交わることができたわけだ。その方は、大工とライブハウス、その両方でやりたいことがまだまだたくさんあったと聞いた。

 私も還暦まであと8年。定年後の趣味と仕事を考えると、いまのうちにそのための人間関係構築や、やりがいを獲得しておこうと思うし、将来的にバーを経営する夢はこのバイト経験で自信に変わってきた。さすがに60代でライター・編集者はキツい。定年後の趣味や生活を考える人は多いだろうが、定年後の「楽しいバイト」をイメージして、現役時代から「二刀流」に取り組むのも悪くはないだろう。

▽中川淳一郎(編集者・PRプランナー) 1973年生まれの編集者・PRプランナー。多数のウェブメディアの記事にかかわる。日刊ゲンダイ「週末オススメ本ミシュラン」担当。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『それってホントに「勝ち組」ですか?』など。

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