エイベックス&電通 本社売却に見るコロナ後の企業の新形態

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不動産アナリスト・長谷川高)

 今から十数年程前、筆者の事務所は建て替え前のエイベックスビル本社(東京・港区南青山)の隣地にありました。ある日、仕事をしていると生演奏が聴こえてきました。ビル前のスペースを利用したミニ屋外コンサートで、デビュー間もないジェイク・シマブクロがジョージ・ハリスンの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」を弾いておりました。

 東京郊外の町田市で輸入レコードの卸販売会社からスタートしたエイベックスは大企業に成長し、青山のビルを住友生命から購入して本社にしていました。頂点に登り詰めたレコード会社に相応しい場所だと思いました。

 その後、エイベックスは、筆者の事務所が入居していたビルも買収し、その地域一帯を再開発し、現在の素晴らしいビルに建て替えました。ところが、今回そのビルを売却するというのです。ビルが完成してまだ3年です。最初にそのニュースを聞いた当初は、なんとももったいないと思いました。サラリーマン時代にリクルートグループでビル用地の仕入れをしていた筆者の経験に照らし合わせると、立地、規模、外観など全てにおいて最上級のビルだと思うからです。当然ながら既に買主として外資系ファンドが手をあげているそうです。エイベックスは、本社を売却した後も借家人としてしばらく入居し続けるということです。

■時代の変化を素早く読み取った先端経営者

 また、電通が中央区汐留にある本社ビルを売却するといったニュースも流れました。電通のビルは、国鉄を清算する時の巨額赤字を補填するために売りに出された旧国鉄汐留駅跡地の一部に建っています。こちらは超高層オフィスビルであり、やはり東京の中でも一等地中の一等地です。

 エイベックスも電通も今期はこのコロナ禍で赤字決算となり、今回の本社売却は赤字の補填ためだと報道されています。エイベックスは音楽興行がこのコロナ禍で開催できないことが事業に大きな打撃を与えたわけですが、電通は海外事業の清算を含め広告収入の大幅な減収となるようです。

 しかし、筆者は、それ以外にも大きな理由があるように思います。電通などは、本社ビルを売却した後、その「半分」を賃借し続けるということです。しかし、これは今回のコロナ禍で起きた「大きな変革」にいち早く適応していこうということではないでしょうか。つまり、これまで皆が皆一箇所に集まって行ってきた業務を大規模なテレワーク実験を実施したところ、業務やその効率に影響が無かったことが判明し、結果、都心の一等地に高い固定資産税や巨額の維持管理費を払い続けることに合理性が見出せなくなったと考えるべきです。電通が本社譲渡後に従来の半分程度しか使用しないという事実がそれを物語っていると思います。さらにに言えば、ある意味、時代の先端を走る企業ゆえに、もはや、東京の都心の超一等地に自社ビルを所有する合理性や価値観が前時代のものになったことをいちはやく察知したのかもしれません。

 さらにもう一つ、敏腕経営者ゆえに「売却するなら今が最高値かもしれない」と踏んだのではないでしょうか。新型コロナウイルスの発生によって「時代」が変わったことを2つの大企業の素早い対応が示しています。

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