岸本吉二商店 岸本敏裕社長<1>昨年末にはホテルでの鏡開き用の菰樽の注文が増えた
初詣の神社にずらりと並ぶ菰樽。そして正月の年中行事である鏡開き。
「神酒が樽で供えられたときには樽の蓋を開いて酒をふるまいます。鏡餅を割って食べる『鏡開き』も、神事での酒樽の蓋を開く『鏡開き』も、ともに新たな出発や区切りに際し、健康や幸福などを祈願しその成就を願うものです」
岸本吉二商店は兵庫県尼崎にある明治33年創業の菰樽メーカーだ。
菰樽の歴史は江戸時代に遡り、樽に入れた酒を樽廻船に乗せて輸送する際、船が揺れて樽と樽がぶつかって中の酒がこぼれないよう、わらを編んだ菰を巻いて樽を保護したのがはじまり。上方から運ばれる酒は下り酒と呼ばれ、それだけで貴重。その菰樽を使った鏡開きは、結婚式披露宴やお祭り、新築家屋の完成時、会社や周年行事などで行われる。
しかし、コロナ禍でさまざまな行事やイベントが中止や延期を余儀なくされ、鏡開きの出番も減少中。同社でもコロナが蔓延していた昨年の3月から売り上げが半減している。その後も、自粛ムードが高まり、業績が回復する兆しが見えなかった。